アップルのDIY戦略

アップル、5Gモデムやバッテリー、カメラセンサーも自社開発中との噂

Image:Diego Thomazini/Shutterstock.com

最近アップルはクアルコムとの5Gモデム供給契約を延長したが、それは独自設計チップの開発が難航しているからだとみられている。当初、独自チップの投入は2024年内を予定していたものの、今では2026年まで延期の可能性もあるとも報じられていた

そうした「主要部品を自社設計に置き換える」動きにつき、アップルの内情に詳しいBloombergのMark Gurman記者が概括して伝えている。

ニュースレター「Power On」最新号にて、Gurman氏はチップ独自設計を「アップルのDIY計画」と表現。各主要パーツにつき、次のように予測している。

5Gモデムチップ

まず新型iPhoneに搭載した後も、iPadやApple Watch、Macに搭載するには、さらに2~3年かかる見通しという。これらは、SoC(プロセッサー)に統合する予定とのこと。現在のMacにモデム内蔵モデルはないが、iPadやApple Watchには当面はクアルコム製チップを採用し続けるということだろう。

Wi-Fi+Bluetoothの無線チップ

こちらも5Gモデムと同じく、当初の2025年予定から遅れに直面しているという。いずれブロードコムが供給するチップと置き換えると1月も報じていたが、開発チームの人的リソース不足のようだ。

マイクロLEDディスプレイ

マイクロLEDとは、超微細なLEDを敷き詰めて映像を表示する技術のこと。これまでの液晶はバックライトにLEDを用いていたが、この方式では赤緑青のLEDが自発光する。大まかに言えば、有機ELパネルの発光素子をLEDに置き換えるものだ。

これは、まずApple Watch に搭載され、最終的には他のアップル製品にも搭載される予定とのこと。数年前からアップルが開発に取り組んでいることは、調査会社Trendforceのほか複数の情報源が伝えてきた。

血糖値モニタリングシステム

将来のApple Watch向けに非侵襲性(注射針が不要)の血糖値測定センサーが開発中であることは、Gurman氏が何度かにわたって伝えてきた。数か月前の報道から、特に進展はないようだ。

独自設計バッテリー

アップルは何十年にもわたりパートナーと緊密に連携してバッテリー開発に深く関わってきたが、「自社でさらに多くのことができるか」検討しているという。こちらも、韓国サプライチェーン情報筋から観測が伝えられていた

自社設計のカメラセンサー

カメラ機能はiPhoneの最も重要なセールスポイントの1つになっており、この技術は「複合現実と自動運転業界の将来の発展の中核となる」とのことだ。ゆくゆくはAppe Vison Pro後継モデルや、自動運転EV「アップルカー」も視野に入っているのだろう。

実際、iPhone 15 Pro Maxでも光学ズームが従来の3倍から5倍に引き上げられたことが注目を集めていた。また次期廉価モデル「iPhone SE 4」も、背面カメラは1つながらも解像度が48MPになり、iPhone 14を凌ぐとの噂話もある

アップルはiPhoneやMac向けSoC、いわゆる「Appleシリコン」で大きな成功を収めてきた。が、モデムは全世界の地域毎に異なる電波事情に合わせる必要があり、血糖値モニタリングはスマホの筐体に収めるためのブレイクスルーが不可欠、カメラセンサーもノウハウの塊である。すべてを自社設計に置き換えるには、相当な歳月がかかりそうだ。

関連キーワード: