【連載】佐野正弘のITインサイト 第226回

高すぎるハイエンドと進化しないミドル、メモリ高騰で厳しさ増すスマホメーカーの秋

佐野正弘

2026年9月10日、米アップルが同社初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」を発表したことが大きな話題となった。詳細は既に本誌でも多く取り上げられているので割愛するが、もう1つ大きな関心を呼んだのはやはり価格だろう。

こちらも既に多く取り上げられている通り、iPhone DuoはApple Storeの価格で、最も安価なストレージ256GBのモデルで36万4800円から、最も高額は2TBモデルで57万4800円からとなっている。この金額はもはや比較対象がスマートフォンではなく、高級ブランドのバッグや時計、高級ホテルのスイートルームなどになってくる水準だ。

iPhoneでは初となる折り畳みタイプの「iPhone Duo」。それだけに大きな注目を集めたが、一方で非常に高額な価格も大きな話題となった

その上であえて同じスマートフォン、折りたたみタイプで形状が近しいサムスンの「Galaxy Z Fold8」と価格を比べてみると、同機種の価格はサムスンオンラインショップで26万9880円(256GBモデル)から35万9880円(1TBモデル)と、iPhone Duoの最下位モデルより安く、値ごろ感は確かにある。それでも、一般消費者が気軽に購入できる水準の価格ではない。

iPhone Duoに近い「Galaxy Z Fold8」の価格は、iPhone Duoより大幅に抑えられているが、それでも25万円超と決して安いとは言えない価格だ

ちなみにiPhone Duoと同時に発表された、バータイプの上位モデル「iPhone 18 Pro」「iPhone 18 Pro」も、日本での販売価格はいずれも20万円超となってしまっている。他の多くのメーカーも、先端技術をふんだんに盛り込んだフラグシップモデルは20万円を超えており、よほど興味のある人でないと高過ぎて買えないというのが常識となりつつある。

価格高騰の要因は、スマートフォン自体の性能向上だけではない。これまで多くの指摘がなされてきた通り、AIデータセンター需要の高まりによるメモリ価格の高騰、そして日本では円安の長期化が強く影響している。メーカー側も本来ならばこれだけ高額で端末を販売したいわけではないだろうが、それを回避する術がないからこそ、ここまで高騰しているわけだ。

そして価格高騰の影響は、フラグシップだけでなくミドル・ローエンドにも強く影響を及ぼしている。2026年は新機種にもかかわらず性能が前モデルから変化なく、それでいて価格据え置き、あるいはむしろ値上げとなる機種が急増している。性能が前機種「Pixel 9a」とほぼ変わらなかったGoogleの「Pixel 10a」がその先駆けとなるが、ここ最近の新機種でもそうしたモデルが明らかに増えている。

実際、FCNTが2026年8月27日に発売した「arrows Alpha2」は、前機種「arrows Alpha」とチップセットなどの性能は変わっておらず、メモリ価格の高騰を受けてRAMやストレージを減らしたモデルを追加しているが、それでもarrows Alphaの発売当初の価格と比べ値段が上がっている。

FCNTの「arrows Alpha2」は、ベースの性能自体は前機種とあまり変わっていないながらも、あらゆる要素を見直してコストを削減し、さらにメモリを減らしたモデルを用意することで、10万円を切る水準の価格をなんとか実現している

また、ソニーが2026年8月25日に発表した「Xperia 10 VIII」(発売は10月9日を予定)も、新機種ながら前機種「Xperia 10 VII」と比べ、チップセットやカメラなどベースの性能がほぼ変わっていない。

そして極めつけとなるのは、シャープが2026年9月中旬以降の発売を発表した「AQUOS wish6」だ。AQUOS wishシリーズは同社の中で、最も低価格帯を担うローエンドモデルとして知られる。

だが、その新機種となるAQUOS wish6は、前機種「AQUOS wish5」と比べるとやはりスペックにあまり変化がないにもかかわらず、SIMフリー版の予想実売価格はなんと5万円前後。これまで2万円前後が相場とされてきたローエンドモデルが、ここまで値上がりしてしまったことに驚きを隠せない。

シャープの「AQUOS wish6」は、ローエンドモデルながらSIMフリー版の予想販売価格が5万円前後と、かつてのミドルクラスに並ぶ水準の価格となってしまっている

ただ、ミドルクラスやローエンドのスマートフォンは価格が重視されるだけに、メーカー側も厳しい状況にありながら、なんとか価格抑えようと苦心している様子も見えてくる。例えば米モトローラ・モビリティは、2026年7月24日にローエンドのスマートフォン「moto g37j」を発売している。

だが、その価格は同社のオンラインストアで3万8800円と、4万円を切る水準に抑えられているのだが、そこには同社の日本市場における戦略が大きく影響しているようだ。

モトローラ・モビリティの「moto g37j」は、ローエンドモデル新機種の中では価格が比較的抑えられている方だが、そこには同社の販売戦略が少なからず影響している

実際同社は2026年、日本での出荷台数を前年比2倍に増やす計画を立てており、その武器がmoto g37jになるという。それゆえmoto g37jはSIMフリーモデルだけでなく、KDDIを除く携帯3社からの発売もなされるなど、携帯電話会社の販路開拓にも力が入れられており、戦略的にあえて国内での販売価格を抑えている様子だ。

別のアプローチから低価格化を実現しているのが中国のXiaomiである。同社は2026年8月28日に、ローエンドスマートフォンの新機種「REDMI 17」を3万4980円で日本市場に投入した。

この機種は7500mAhものバッテリーを搭載するなど特徴的な要素を備える一方で、「おサイフケータイ」を利用するためのFeliCaに対応していないだけでなく、最新機種ながら5G通信にも対応していないのだ。

Xiaomiのローエンドモデル新機種「REDMI 17」もローエンドで3万円台を実現しているが、それは5Gに非対応という側面も大きい

実は5G非対応のスマートフォンは、5Gのインフラ整備が途上の新興国で根強い需要があるため、Xiaomiも多くの端末ラインアップを持っている。一方で、国内では5G非対応でもいいから安くしてほしいというニーズが一定数存在することから、5G非搭載で低価格を実現できるREDMI 17を投入するに至ったようだ。

ただメーカーがどれだけ努力をしても、メモリ不足など原因の根本が解決しない限り、スマートフォンの価格高騰は収まらない。それだけにこの状況が続けば、2023年に国内メーカーが相次いで撤退したのに続いて、再びスマートフォンメーカーの撤退ラッシュが起きることにもなりかねないだろう。

実は2026年7月、デザインに注力したスマートフォンを提供している新興メーカーの英Nothing Technologiesが、日本をはじめ12以上の市場から撤退するとの一部報道がなされ、同社がそれを否定するという一幕があった。そうした噂が立ってしまうこと自体、業界全体が非常に厳しく、いつ、どのメーカーが撤退の判断を下してもおかしくない状況にあるといえるのではないだろうか。

今の状況が何年続くか分からない。だが、今後のスマートフォン市場を盛り上げていくためにも、メーカー各社にはなんとか、厳しい状況を乗り切って欲しいと筆者も切実に願っている。

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