中国なみのサプライチェーン構築が必要

アップル、製造の中国依存を脱却へ。インドなどへ移転「加速」との報道

Image:ADRIAN3388/Shutterstock.com

今年に入ってアップル製品の納期が遅れたり品不足が目立っていたが、それはもっぱら生産拠点のある中国の主要都市がゼロコロナ政策によりロックダウンされたから、と見られている。iPhoneやMac等の組立工場は操業が制限され、都市封鎖により物流も止まるためだ。

そんななか、最近のアップルが生産拠点の一部を中国国外に移す計画を「加速している」との噂が報じられている。米The Wall Street Journal(以下、WSJ)報道によれば、移転先の主な候補地はインドとベトナムなどアジア諸国とのこと。これら諸国は、すでにアップルがサプライチェーン網と大規模な生産拠点を構築している地域だとされている。

すでにアップルはインドとブラジルの施設で、一部の旧型iPhoneを生産中である。またベトナムでは、同社製造パートナーのLuxshareとInventecがAirPodsとHomePods製品の組立工場を運営している。

もっとも最新鋭のiPhoneモデルについては、いまだに中国に依存しているという現状がある。その中でも台湾Foxconnが運営する鄭州市の組立工場は世界最大規模を誇り、容易く移転できるわけではない。

なぜ困難かと言えば、中国内に築かれた製造インフラや精緻なサプライチェーン網、さらに大規模かつ安価な労働力は、他ではなかなか得られないものだからだ。そのため時間をかけて徐々に移す必要があるが、アップルは最終的には「インドからのiPhone出荷割合を現在の一ケタから40~45%に増やす」狙いとのことだ。

アップルが中国外に生産拠点を移そうとする動きは、米中の貿易摩擦が激化した数年前から報じられており、今に始まったことではない。しかし、「加速」する直接のきっかけとなったのは、先日の鄭州市iPhone工場での混乱だったという。「安定した製造拠点としての中国の地位を弱めた1年間の出来事」の末に起きた今回の事態により、アップルは事業の大部分を1箇所に集中させることは問題だと感じ始めたそうだ。

またWSJによると、アップルは製造パートナーに対して、中国外でもNPI(新製品導入)作業を増やすことを望んでいるそうだ。これまでは「まず中国で最新モデルを生産、旧製品を他の諸国で生産」という配分となっていたが、8月にはiPhone 14をインドと中国でほぼ同時に量産開始するとの報道もあった

つまりインドをはじめとしたアジア諸国でも、新製品の量産に耐えうるサプライチェーン網の構築が望まれているわけだ。一方で、世界経済の低迷とアップルによる雇用の鈍化がNPI作業に人手を割り当てることを困難にしていると報じられている。

上記の鄭州市工場での混乱は、アップルにとってドル箱であるiPhone 14 Proモデルの製造を直撃している。年末商戦期には出荷台数が市場予想より2000万台も少なくなり、しかも失われた需要は取り戻せないとのアナリスト予測もあるほどだ。

今後アップルの対中依存が減っていくとすれば、なぜか中国内だけでAirDropの機能が制限されるといった事態がなくなるのかもしれない。

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