人口増加中のインドは将来有望な市場でもある

「iPhone 14」中国とインドで同時に生産開始との情報。台湾めぐる地政学リスク回避か

Image:hyotographics/Shutterstock.com

いよいよ「iPhone 14(仮)」シリーズも発表・発売を間近に控え、生産を開始するとの噂が報じられている。毎年の夏、7~8月頃に新型iPhoneの量産が始まるのは恒例ではあるが、異例なのは「インドと中国でほぼ同時に」行われるという情報があることだ。

アップルのサプライチェーン情報に詳しいアナリストMing-Chi Kuo氏は、同社の主要製造パートナーであるFoxconnが、iPhone 14のうち6.1インチモデルを中国とインドの生産拠点からほぼ同時に出荷すると述べている。本当であれば、新型iPhoneの製造が中国と同時期に別の地域で始まるのは、初めてのことになる。

Kuo氏が指摘しているように、例年であれば中国以外での新型iPhoneの生産が始まるのは数ヶ月遅れとなっていた。たとえばFoxconnのインド拠点でiPhone 13の組立てが始まったのは今年4月で、ブラジルでの生産はその数週間後のことだった。

もちろん、今なお新型iPhoneのほとんどは中国で組み立てられている。“iPhone City”の異名を取る鄭州市では、大気汚染とiPhone 12シリーズ量産の関係が疑われたこともあるほどだ。

全世界への出荷も中国発がメインで、それ以外での地域での生産は、輸入関税が高く、かつ十分なユーザー数が見込める国など、もっぱら現地市場向けだ。

Kuo氏も、インドでのiPhone 14生産能力/出荷台数は、短期的には依然として中国のそれと相当のギャップがあるという。それでもこの一件は、iPhoneの生産拠点を中国以外に築く上で「アップルにとって重要なマイルストーン(中間目標地点)」だと指摘している。

さらに、アップルがインドでのiPhone生産を加速することを決めたのは、サプライチェーンへの「地政学的な影響」を減らすとともに、インド市場を次の成長の原動力と見なしていることを意味するとも付け加えている。

ここでいう「地政学的な影響」とは、台湾をめぐるリスクを指しているのだろう。今月3日にナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことに中国は反発を強めており、米国防当局との対話を停止するなどの報復措置を発表している。

この事態を受けてアップルはサプライヤーに、台湾から中国への出荷について、中国の税関規制を厳密に守るよう通達したとのNikkei Asia(以下、日経)報道もある。もともと中国は台湾製部品などに「Taiwan, China(台湾、中国)あるいは「Chinese Taipei」(中国台湾)との表記を義務づけているが、物流が「検査」のために止められて混乱することを避けるため、緊急に対応するよう急がせているそうだ。

日経によると、ペロシ氏がiPhone組み立てメーカー、Pegatron(台湾企業)の幹部らと会った直後に、同社の中国工場からの出荷が「台湾」または「中華民国」と書かれているかどうか確認するためとして差し止められているとのこと。つまり中国側の報復というわけである。

もっともPegatronはこの噂を否定し、中国工場からの出荷に支障はないとの声明を出している

どうやら情報が錯綜しているようだが、いずれにせよ米中の狭間に置かれたアップルが不安定な立ち位置にあることは事実だろう。今後はインドや東南アジア、そしてブラジル等でのiPhone生産を増やすことになりそうだが、中国への依存度を下げるには、かなりの時間がかかりそうだ。

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