米政府のホワイトリストに載ったパッケージング業者を使う必要

TSMC、中国向け高度なAIチップ出荷規制をさらに強化

Image:Dan74/Shutterstock

昨年11月、世界トップの半導体製造受託企業TSMCは米政府からの要請を受け、中国顧客への先進AIチップの出荷を停止していた。これは、同社の製造したチップが中国ファーウェイ製のAIプロセッサ内部で発見されたことを受けてのもので、当時は7nmプロセスノード(回路線幅)以下の高度なチップが対象となっていた

それに続きTSMCは1月31日、中国の半導体設計専門の顧客に対して、BIS(米国商務省産業安全保障局)ホワイトリストに掲載されたパッケージング企業を使わない限り、16nm以下のチップを出荷できないと通達したと報じられている。中国向けの高度なAIチップに対する輸出規制が、さらに強化されたことになる。

ここでいう半導体設計専門企業とは、チップ製造施設や工場を持たない(ファブレス)企業のことだ。つまりチップ製造についてはTSMCを、後工程のパッケージングにも他社に依存することになる。多くの中国ファブレス企業は、パッケージングをBISホワイトリストに掲載された企業に移行し、TSMCからの供給を確保しようとしているという。

世界的な注目を集めた中国のDeepSeek-R1は、2ヶ月間という短期間で2,048個のNvidia H800 GPUを使って訓練されたと報じられていた。H800は4nmプロセスノードで製造され、800億トランジスタを搭載している。

もともとH800は、当時の最先端チップH100を中国に輸出できるよう性能を抑えたものだが、2023年10月にはこちらも輸出禁止とされている。そのため米政府とFBIは、DeepSeekがどのように入手したかを調査し、シンガポールの仲介業者が関与した可能性も浮上している

しかし、DeepSeekが比較的乏しいリソースにより、米ハイテク大手と同等の生成AIを開発した事実は揺るがしがたい。こうした輸出規制により、逆に中国でのAI開発が加速するのかもしれない。

関連キーワード: