米政府が命じる
TSMC、中国向けAIチップの出荷を停止。7nm以上のチップが対象
米商務省が台湾の半導体製造大手TSMCに対し、AI用途に使われる先進チップの中国顧客への出荷停止を命じたと複数の大手メディアが報じている。先日、TSMCが製造したチップが中国ファーウェイのプロセッサ内部で発見されてから数週間後のことだ。
米Reutersの情報筋によると、商務省はTSMCに書簡を送り、AIアクセラレータやGPUを駆動する7nm以上の高度なチップの輸出制限を課したとのことだ。またThe New York Timesは、2人の事情に詳しい関係者が、TSMCは米国の規制に準拠していることを確認すべく注文を精査する間、先端チップの出荷を停止すると述べている。
ファーウェイは商務省のエンティティリスト(国家安全保障や外交政策に対するリスクがあると判断された企業や個人のリスト)に掲載されており、同社に物品や技術を輸出するサプライヤーは米政府のライセンスを取得する必要がある。ファーウェイのAIへの取り組みを支援する可能性あるライセンスは、ほぼ確実に却下されるだろう。
米政府は長年にわたり、AIに不可欠な最先端チップが軍事目的に使われる懸念から、中国企業の手に渡らないよう注力してきた。NVIDIAのような米国企業が強力なAIチップを販売することを阻止し、日本とオランダには高度なチップ製造装置を輸出しないよう働きかけている。
しかし、米国の規制はTSMCが中国向けチップの製造を全面的に禁止するものではない。それどころか中国企業が強力な機能を備えたチップを発注していないと審査すべしとして、高度ではない製品の出荷は容認している。
TSMCの収益のほとんどは、世界最大手のアップルやNVIDIAを含む米企業からのものだ。しかし、中国テクノロジー大手Baiduや自動運転ソフトウェア企業のHorizon Roboticsなども、小さいながらも重要な位置を占めている。米政府がチップ輸出の規制を開始して以来、中国企業からの収益はほぼ半減しているが、それでも2023年には12%に上っているという。
今回の報道につき、TSMCは声明を発表。同社は法律を順守する企業であり、米政府の規制が施行されて以来、ファーウェイにチップを供給していないと述べている。「わが社は輸出管理を含め、すべての規則と規制を遵守することを約束する」とのことだ。
とはいえ、中国への抜け道はいくつもある。たとえば一部の企業が過剰在庫をグレーマーケットに横流しする、といった可能性である。物流のルートは無限にある以上、完全な輸出停止は困難かもしれない。
- Source: Reuters The New York Times
- via: TechCrunch