中国が自前でEUVを開発するのは非常に困難

中国ファーウェイ、2026年までは7nmチップ止まり?スマホとAIの進歩に大きな制約

Image:Ascannio/Shutterstock.com

今年初め、中国の通信機器大手ファーウェイと半導体製造大手SMICは、高度なEUV(極端紫外線装置)を使わずに5nmプロセス技術の開発に成功したと報じられていた。旧式のDUV(深紫外線装置)により量産するとのことだが、EUVの4倍以上のコストが掛り、歩留まりや信頼性の低さに悩まされると予想されていた。

この問題は7nmプロセスにも当てはまり、ファーウェイは少なくとも2026年まではそれ以上のプロセスへの進展が望めないとBloombergが報じている。

台湾TSMCの7nmプロセスは2018年から量産を始めており、SMICの7nmは2021年に市場に投入された。出だしが数年遅れたうえに、さらに5年も足止めされることになる。

ファーウェイはAI向けの高性能プロセッサー「Ascend」を2タイプ開発中だが、事情に精通する人々によれば、いずれも7nmアーキテクチャに留まるという。

これは米政府が半導体製造装置メーカーASMLに対して、EUV機器を中国に販売しないよう圧力をかけているためだという。さらに、最近TSMCが中国向けに7nm以上の高度なAIチップを出荷停止したとの報道もあった。

SMICは中国政府との関係が深く、巨額の資金提供や政策的な後押しを受けている。過去には政府が同社に22億ドルもの資金を注入したことや、75億ドルの設備投資を計画していると報じられていた

そうした制約は、ファーウェイのスマートフォン「Mateシリーズ」にも及ぶという。さらに悪いことに、SMICは7nmチップを安定して量産することに苦労しているという。同社にチップ製造を依存せざるを得ないファーウェイも、今後数年のうちに十分なスマホとAI用チップを確保できる保証がないとの証言も伝えられている。

ファーウェイは最近、次期「Mate 70シリーズ」向けに新型のKirin 9100を導入し、6nmプロセスで量産するとの噂もあった。その「6nm」も単なるマーケティング用語にすぎず、実態は7nmの改良版に過ぎないとの見方もある。

何百万個もの部品とノウハウの塊であるEUV装置は、ASML以外では製造が不可能と言われており、SMICを含めた中国企業が自力で開発するには長い歳月がかかることだろう。それだけ、中国が台湾に侵攻してTSMCを手中に収める動機が高まらないよう祈りたいところだ。

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