中国にとっても鄭州工場はドル箱のはずが

中国当局、世界最大のiPhone工場で従業員を拘束。台湾への政治的圧力か

Image:Ascannio/Shutterstock.com

中国の地方当局が、世界最大のiPhone製造施設において台湾人の従業員4名を拘束したと米The Wall Street Journalが報じている。

この施設は、台湾Foxconnが中国・鄭州市で運営するアップル製品の組立工場とのこと。鄭州市での製造は全世界のiPhone生産のうち約80%を占めており、同市は別名「iPhone City」とも呼ばれる。

今回の拘束は、中国政府が台湾独立をめざす「頑固な」分離主義者を処罰する指針(最高刑は死刑)を打ち出してから数か月後のことだ。従業員らは背任に似た罪で告発されたとみられるものの、正確な罪状は特定できていない。

台湾で対中政策を担当する大陸委員会(MAC)は、Foxconn側が「従業員の行動に関連しての金銭的な損失を被っていない」と述べたと発信している。もっともFoxconnは、WSJのコメント要請に応じていない。

MACは、今回の疑惑を奇妙なものと表現し、不適切な拘禁は中国に対する投資家の信頼を著しく損なう可能性があるとコメント。さらに中国当局に対して、この問題についての迅速かつ透明性のある調査を行うよう求めている。

ここ数年、中国と台湾の関係は緊張の度合いを増す一方である。今年5月には、中国の人民解放軍が台湾を包囲する演習を行い、台湾を全面封鎖できる能力があると誇示していた。英国と米国の情報機関および軍は、人民解放軍の創設100周年にあたる2027年に台湾侵攻のリスクが深刻になると警鐘を鳴らしている

もしも台湾侵攻が現実のものになった場合、米政府が最も警戒しているのは世界最大手ファウンダリー(半導体受託製造)TSMCの技術が奪われることだ。米政府関係者の一部はTSMCの施設を爆撃するシナリオを検討しており、TSMCも有事の際には半導体製造装置をリモート操作で使用不能にできるとも報じられていた

今回の拘束により、アップルが製造の中国依存を脱却し、拠点をインド等に移す動きがますます加速しそうだ。

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