しかし最初に実現するのはクアルコム?

インテル、AIサービス「Copilot」は将来的にローカルで動くと予告

Image:Intel

マイクロソフトは1月、今後のWindows 11 PCにAIサービス「Copilot」専用キーを搭載すると発表しつつ、2024年は「AI PC」の年になると述べていた。

AI PCの定義は、ザックリ言えば従来のWindowsマシンには搭載されていないハードウェア、すなわち内蔵NPU(Neural Processing Unit)が搭載されていることだ。が、今のところAI PCがユーザーに何をしてくれるのか、現実的な話は聞こえてこない。

そんななか、近いうちにCopilotがクラウドではなくPC上でローカル動作するようになるとインテルが明らかにしたと報じられている。

PCハードウェア情報サイトTom’s Hardwareは、インテルが台湾で開催したAI Summitに参加。その場でインテル幹部に質問したところ「次世代に移行するにつれ、より多くのことをローカルで実行できるようになるだろう。Copilotの全てがローカルで実行できるという意味ではないかもしれないが、NPUで主要な機能の多くが実行されることになる」との回答を得ている。

現在、Copilotは小さなリクエストであってもクラウドサーバーに依存している。それが広範な情報を集めた上での回答であれば許容できるものの、少し設定を変更したり簡単な回答を求めるだけの場合、遅延にストレスを感じる人も少なくないはずだ。

もしも生成AIモデルをローカルで実行可能になれば、レスポンスが早くなるばかりか、ユーザーのプライバシー保護も改善される。企業レベルでも情報を外に送信することなく、セキュリティを強固にしたままAIモデルを訓練し、社内に最適化したAIを組み込んだソフトを活用できるようになるだろう。

今のところ、WindowsはNPUをあまり活用していない。マイクロソフトは新型Surface製品を発表するさい、ビデオ通話中に背景のぼかしや自動フレーミングを使える「Windows Studio 効果」に使うと強調していたが、裏返せばそれだけだ。かたやアップルのiPhoneやグーグルのPixelは、顔認識やオブジェクト認識、OCRや文字起こし、翻訳など、画像や音声処理など幅広い機能にNPUを用いている。

またインテルによれば、マイクロソフトの「次世代AI PC」に搭載するNPUは、単体で40TOPS(1秒間に40兆回の演算)もの性能が求められるという。インテルのCore Ultraは10TOPS、AMDのRyzen 7040と8040はそれぞれ10TOPSと16TOPSと公称され、どちらも基準を満たしていない。

Copilotをローカルで動かせるチップを最初に世に送り出せるのは、インテルではなくクアルコムかもしれない。同社のSnapdragon X Eliteは45TOPSを達成できると強調しており、搭載したWindows PCは2024年半ばに登場すると示唆していた

とはいえ、TOPSは極めて単純化した性能指標の1つに過ぎない。グラフィック性能を比べるためにTFLOPS(1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数を1兆回単位としたもの)を使う場合と同じく、TOPSも様々なタスクを行う場合のパフォーマンスのバラツキまで捉えることはできない。

また、Arm版Windowsにはソフトウェアとハードウェアの互換性の問題も残っており、それが足かせとなる可能性も残されている。クアルコムはSnapdragon X Elite搭載PCでほとんどのWindowsゲームが動くとも予告しているが、製品発売までの調整がどれほど行き届くのか注目したいところだ。

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