時計を着けたがらない人にはリングを売り込み?
アップル、カメラ付きAirPodsやスマートグラスも検討中か
アップルがヘルスケア産業に強い関心を抱いていることは、Apple WatchにECG(心電図)アプリを搭載したり、フィットネスサービスApple Fitness+(日本未提供)に注力していることでも明らかだ。また将来のAirPodsに健康関連センサーを追加する計画や、スマートリングを開発中との噂も何度か報じられてきた。
そうした憶測が渦巻くなか、アップル社内で研究・開発が進められている健康関連ウェアラブル機器につき、著名ジャーナリストがあらましを伝えている。
アップルの社内情報に詳しいBloombergのMark Gurman記者によると、同社は長年にわたり健康/フィットネス用のスマートリングやスマートグラス、カメラを内蔵したAirPodsなど、いくつかの新型ウェアラブル機器の開発を検討してきたという。
なぜアップルが、ウェアラブル機器にこだわるのか。1つには、すでに堅実なビジネスになっていること。Apple WatchとAirPodsを含む同部門は、全収益の10%を占めており、10年前の5%未満から倍増している。
もう1つは、新規顧客を獲得するきっかけとなり、これまで以上にアップルのエコシステムに閉じ込めておくのに役立つからだとGurman氏は指摘している。実際、iPhoneから他社のスマートフォンに乗り換えれば、Apple Watchとの連携や、これまで蓄積した健康関連データが使えなくなるため、否応なく「アップル経済圏」に留まり続ける人も少なくないだろう。
さて、Gurman氏がニュースレター「Power On」最新号で紹介している未発表ウェアラブル機器の概要は次の通りである。
スマートリング
- 数年前、アップルのインダストリアル・デザイン・チームは、健康とフィットネス機能に特化した「スマートリング」のアイディアを健康チームの幹部に提示した
- 現時点ではリングは「単なるアイディア」に過ぎず、積極的に開発しているわけではない。ただし、社内でコンセプトを推進している人たちがいることは事実
- Apple Watchを健康追跡機能のために購入する人は多いが、アプリや通話など他の機能は要らない、腕時計を着けたくない、夜間に充電が必要な製品は欲しくない人もいる
- そのためApple Watchに代わる低価格の製品として、iPhoneのアクセサリーとして販売する可能性はある
スマートグラス
- 社内の研究所のエンジニアらが、MetaのRay-Ban MetaスマートグラスやアマゾンのEcho Framesと競合するような「それほど野心的ではない」製品の開発を検討している
- カメラやスピーカー、健康センサー、AI機能を内蔵した「AirPodsの代わり」となる位置づけ
- まだハードウェアエンジニアリング部門で「技術調査」の段階にある
カメラ付きAirPods
- レンズやフレームなしに、スマートグラスのもたらすメリットの多くを享受できる
- 昨年(2023年)からコードネーム「B798」として調査を開始
- 低解像度のカメラセンサーをAirPodsに搭載する方法を探っている
- もし発売されれば、「人々の日常生活を支援する」AI機能を提供できる可能性がある
アップルが「真のARグラス」を開発中ながら、必要な部品の小型化やバッテリー持ちなど課題が山積みで「まだ何年も先になる」見通しは、他ならぬGurman氏が伝えていたことだ。
その繋ぎとして、ディスプレイを内蔵せずカメラとスピーカーだけに割り切った製品を投入するのは現実的だろう。またマイクとスピーカーのみに絞り込んだ「音の出るメガネ」ことHUAWEIのEyewearシリーズも一部で根強い支持を勝ちえている。
しかし、ウェアラブル機器にカメラを内蔵すればプライバシー問題も生じやすい。Metaはビデオ撮影中に光るLEDインジケーターを目立ちやすくしていた(隠そうとすると警告が出る)が、カメラ内蔵AirPodsでも同様の配慮が必要となりそうだ。