将来的に血中酸素ウェルネスAppの削除もあり得る?

アップル、Apple Watch販売禁止の解決は和解がベスト?莫大な支払いが発生する可能性

Image:ms_pics_and_more/Shutterstock.com

米国にて、「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」が医療機器会社Masimoの特許を侵害したとして米ITC(国際貿易委員会)が裁定し、輸入・販売禁止となった。アップルが控訴して一時的に解除され、もっか特許問題を回避できるソフトウェア・アップデートを準備中である

そんななか、アップルはMasimoにライセンス料を支払い和解するのが最善の道だと調査会社Trendforceが主張している。

今回Masimoの特許を侵害していると裁定されたのは、非侵襲的(注射針を刺さない)血中酸素モニターに関する技術だ。Apple Watch Series 9とApple Watch Ultra 2のみが輸入禁止の対象となり、「Apple Watch SE」は除外されている。

TrendForceの最新レポートでは、アップルがこれらモデルの販売を再開するために2つの方法があると指摘。そのうち1つはソフトウェアとハードウェアを調整し、規制当局に認可を再申請することだ。

アップルは特許問題を回避できる「再設計」を提出すると述べており、それはソフトウェア更新のみだという報道もあった。だが、Masimo側はソフトウェアの修正では十分ではなく、ハードウェアを変更する必要があるとコメントしていた

もしも内部のハードウェアを変更するのであれば、規制当局の審査に時間がかかるのはもちろん、開発に数ヶ月以上はかかるだろう。このレポートでも「アップルの製品発売スケジュールが毎年9月であることを考えると、大きな時間的プレッシャーに直面している」として、現実的ではないと示唆している。

第2の選択肢が、Masimoに歩み寄り、和解金を支払うことだ。MasimoのCEOであるジョー・キアニ氏は最後まで戦い抜くとしつつ、アップルとの和解に前向きである。ただし、まだアップルは和解を真剣に検討しているようには思えないとの趣旨を述べていた

Trendforceは、過去にアップルがクアルコムとの特許訴訟や、ユーザーとの集団訴訟(iPhoneの意図的な低速化)で和解により紛争を解決したと指摘。

しかし、和解金額は前者では約45億ドル、後者では最大5億ドルなど、かなりの金額に上っている。2023年内のApple Watch売上が200億ドルに満たない可能性を考えれば、アップルにとって不利かもしれないという。

血中酸素モニタリング機能は、新型コロナ禍の最中では需要が高かったものの、その収束とともに注目も薄れている感がある。さらに特許問題を解決するため、和解と継続的なライセンス料支払いが発生するのであれば、アップルに「血中酸素モニタリングの必要性を見直す」ことを促すかもしれない、とのことだ。

アップルは血中酸素モニタリング機能を「医療目的ではなく、あくまで一般的なフィットネスとウェルネスを目的としたもの」と但し書きしている。医療従事者に情報を提供できる心電図アプリ程の重みはなく、将来的にApple Watch後継モデルから削除もあり得そうだ。

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