望遠レンズの性能が底上げされる?

iPhone 15 Pro Maxが採用したハイブリッドレンズ、他社ハイエンドスマホも追随か

Image:Framesira/Shutterstock.com

iPhone 15 Pro Maxのカメラには、ガラスとプラスチックの「ハイブリッドレンズ」が採用されている。この新技術が、やがてハイエンドのAndroidスマートフォンにも普及する可能性が高いと著名アナリストが主張している。

アップルのサプライチェーン情報に詳しいアナリストMing-Chi Kuo氏は自らのブログで、iPhone 15 Pro MaxとファーウェイのP70 Artにガラスープラスチック ハイブリッドレンズが採用されたため、将来的に競合他社のハイエンドモデルも追随する可能性があると述べている。

iPhone 15シリーズがハイブリッドレンズを採用した初の国際的スマートフォンになることは、発売前から予想されていた。iPhone 14以前は全機種ともプラスチックレンズのみ使っており、他社のスマホも一般的にそうである。

なぜ、これまでスマホ向けにはプラスチックのみが用いられてきたのか。1つには、ガラスレンズはプラスチックレンズよりも大きくなり、内部スペースが限られている薄型デバイス(スマホ等)には搭載しづらい。

またガラスはプラスチックよりも重いため、様々な機構に負担を掛けやすい。光学式手ぶれ補正用のモーターも大きくなり、重量と消費電力を増やしてしまう。最後に、ガラスはより壊れやすく、スマホを落としたときにレンズが損傷する可能性が高くなる……といった諸々の理由がある。

だが、iPhone 15 Pro Maxのテトラプリズムレンズ(望遠用のペリスコープ望遠レンズ)は、1G(ガラス)3P(プラスチック)で構成されるハイブリッドタイプだ。すべてガラスで構成するには難があるため、一部だけガラスに置き換え、プラスチックレンズによる歪みを修正する妥協案である。

iPhoneのテトラプリズムレンズは台湾Largan Precision製だが、球面ガラスレンズは外注されているという。しかしLarganは、アップルの要求品質を満たせるガラスレンズ開発に取り組んでおり、早ければ2025年~2026年にモジュール全体を製造できる可能性があるとのことだ。

今年iPhone 15 Pro Maxのみにテトラプリズムレンズを搭載されたのは、レンズの製造歩留まりに問題があったことが一因とみられている。それも解消されつつあり、来年には小型の「iPhone 16 Pro」にも搭載される見通しだ。そのため売上増が期待できるLarganは、競合する中国Yujingguangと法廷闘争を繰り広げている最中だ

iPhoneに採用された技術がハイエンドAndroidスマートフォンに広がる現象は、2017年のiPhone Xで出現したノッチ(画面上部の切り欠き)が他社製品でも大流行した前例がある。2024年は、スマートフォンの望遠カメラ性能が全般的に底上げされるのかもしれない。

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