それより十分な量を生産してくれとの声もある?

「iPhone 16 Pro」用の望遠レンズめぐり中国と台湾のサプライヤー2社が特許争い

Image:Apple/YouTube

iPhone 15 Pro Maxの光学5倍ズームは、新技術「テトラプリズムレンズ」により実現している。その特許をめぐり、アップルの主要サプライヤー2社が争いを繰り広げていることが明らかとなった。

アップルと言えば特許絡みの紛争が絶えないが(Apple Watchも医療技術企業Masimoの特許を侵害しているとの裁定から、米国に輸入禁止の可能性あり)、今回に限っては直接の関わりがない。あくまで、台湾のレンズメーカーLargan Precisionと中国のレンズメーカーYujingguangの間でのことだ。

iPhone 15 Pro Maxの5倍望遠レンズは、目玉機能の1つだ。この方式はプリズムにより光の向きを変え、本体に対して横方向にレンズを配置するため従来の縦に積み重ねる方式より、スマートフォンの厚みを抑えつつ、高倍率の光学ズームが実現しやすい。

まるで潜水艦の潜望鏡のような形状から、一般的にはペリスコープ(潜望鏡)方式とも呼ばれている。そしてiPhone 15 Pro Maxのテトラプリズムレンズは、光を90度反射させるプリズムが1つではなく合計4つ(テトラ)入っている。

現在テトラプリズムレンズは、台湾のLarganが独占的に製造している。台湾メディアのUDNによれば、同社はレンズのデザインや製造工程に関する特許を持つと主張しているという。次期「iPhone 16 Pro」では大小モデルともテトラプリズムレンズ採用が予想されるため、収益のさらなる増加が見込まれているわけだ。

そんななか中国の競合メーカーYujingguangは、2つ目のテトラプリズムレンズ供給元になろうとしているとのこと。Larganはそれを阻止または妨害するため、特許に基づく法的措置を取っていると報じている。

ちなみに、YujingguangはMRヘッドセット「Vision Pro」用VRレンズの主要な供給元だとも伝えられている。もともとアップルの有力なサプライチェーン・パートナーであり、その取引を拡大しようとしているようだ。

テトラプリズムレンズは平均売価が低く抑えられ、Larganにはほとんど利益がないとのアナリスト報告もあった。それでも、全世界で年間2億台を出荷するiPhoneの巨大市場は魅力的なのだろう。

そもそも発売直後のiPhone 15 Pro Maxが品不足や納期遅れに見舞われたのは、レンズの生産量が限られたため(製造歩留まりが低かった)とみられている。ユーザーにとっては、サプライヤー同士が争うよりも、十分な量のパーツを供給するよう望まれそうだ。