アップルはコスト削減、TSMCはアップルのカネで3nm技術改善

アップル、TSMCと「iPhoneの3nmチップ」独占契約、数十億ドルを節約か

Image:Poetra.RH/Shutterstock.com

アップルは次期iPhoneおよびMacに搭載する「A17 Bionic」および「M3」チップの製造を台湾TSMCに委託し、3nmプロセス技術を用いると噂されている。今年秋の「iPhone 15 Pro」は、世界初の3nmチップ搭載スマートフォンになるというわけだ。

これまでにもアップルとTSMCとの契約条件について報じられてきたが、より詳細な内容をニュースメディアThe Informationが説明している。

同誌の報道によると、アップルとTSMCは、A17を製造する際に「不良品」を生産するコストをTSMC側が引き受ける契約を結んだという。またTSMCの新たな3nm製造ラインは、最初の1年はアップルが独占しているとのことだ。

TSMCの顧客は通常、ウェハー(薄いシリコン板。表面に回路パターンを形成し、切り出すことでダイ=半導体チップとなる)とそれに含まれるダイ全てに代金を支払う必要がある。つまり不良品に関しても支払いが発生するため、これは非常に型破りな契約である。

The Informationいわく、8月7日時点での3nmプロセスの歩留まり率は70%から80%とのこと。つまり、新技術によるウェハーの5分の1には欠陥があり、アップルから支払いは受けられない。それでも、先月の韓国サプライチェーン情報では55%とされていたことから、順調に改善しているようだ。

この契約により、アップルは最先端プロセスに関するコストを数十億ドル節約できるという。かたやTSMCにとっても、アップルの注文は大規模なため、経済的に理に適っているとのこと。

要は、TSMCは他の企業から受注する前に、アップルからの支払いを受けつつ、まだ問題の多い3nmチップの製造プロセスを改善できる。その一方でアップルは、何十億ドルも節約しつつ、競合他社に先んじてiPhoneの性能を向上でき、Win-Winというわけだろう。

そして3nm技術により、iPhone 15 Proの性能は35%も向上する可能性があるという。先代のA16 BionicはTSMCの4nm技術で製造されていたが、回路線幅の微細化により電力効率も向上し、バッテリー持ちが飛躍的に改善することもあり得るだろう。

その一方で、アップルはTSMCからの先端プロセス製造での値上げ要求を受け入れたとの報道もあった。たとえアップルが欠陥品のコストを背負わなかったとしても、チップの単価が上がっていることに変わりなさそうだ。それがiPhone 15 Proの価格に上乗せされて、噂通りかなりの値上げに繋がるのかもしれない。

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