ウェハー単位になるのは歩留率70%を超えてから

アップル、TSMCに「A17 Bionic」不良品分は支払わず?3nm製造の歩留まり向上に苦戦か

Image:Ivan Marc/Shutterstock.com

アップルは次期iPhoneおよびMacに搭載する「A17 Bionic」と「M3」チップ用に、台湾TSMCの3nmプロセスによる年内の製造能力のうち90%を独占したと報じられていた。しかし、一方では3nm製造による歩留率が55%から改善せず、TSMCが苦戦を続けているとの噂が届けられている。

もっかTSMCやサムスン、インテルといった半導体製造大手は、技術的なリードをめぐり凌ぎを削っている。それは利益率が高い高度なチップ製造を独占できれば、半導体市場での利益の大部分が得られるためだが、今のところTSMCがトップの座を守っている。サムスンは安定した最先端プロセス技術を実証できておらず、インテルは数年遅れといったところだ。

しかし、米EE TimesによればA17とM3に投入される初期3nm技術こと「N3」(N3Bとの説もある)の歩留まりは55%程度に留まっているという。現段階では健全なレベルとされるが、それでも半分近くは不良品ということだ。

そのため、少なくとも最初の3~4四半期、歩留まりが70%程度まで上がるまでは、TSMCは標準的なウェハー価格ではなく、良品ダイに対してのみアップルに請求できるとのこと。

ウェハーとは半導体を製造するためのシリコン単結晶でできた薄い板であり、ダイとはそれを1枚1枚に切り分けたチップのことだ。つまり、通常であれば不良品も含めてウェハーの板ごとに請求しているところを、問題ないダイの分しか支払ってもらえないわけだ。

この取引条件が、平均販売価格1万6000~1万7000ドルのウェハーベースに移行するのは、2024年前半だとみられている。一方的にTSMCにとって不利な条件にも思えるが、アップルが3nmプロセスばかりか今後の最先端ノードでも最大手の顧客であることを見越して、おそらく応じたのだろう。

また、アップルが3nmプロセスへの移行にともない、TSMCの値上げ要求を受け入れたとの報道もあった。それぞれが業界トップだけに、価格の交渉も熾烈、かつ小まめに行われているのかもしれない。

また、TSMCがAppleシリコン(独自開発チップ)に使う3nm技術を、初期の「N3B」から2024年には「N3E」に切り替えるかもしれないとの噂もあった。N3EはN3Bよりも製造しやすい代わりに性能が落ちるコスト削減バージョンとも言われるだけに、アップルが受け入れるかどうかも不透明である。

iPhone 14 Proモデルに搭載されたA16 Bionicチップは、レイトレーシング対応のはずが断念されたとの噂もある。A17は4nmから3nmへの移行により性能や省電力性が改善されるのは当然として、そうした新機能の追加も期待したいところだ。

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