背景にはトップクラス人材の流出あり

iPhone 14 Proはレイトレーシング対応のはずだった?前例のないミスで断念

Image:Apple

最新世代のiPhone 14 Proモデルに搭載されたA16 Bionicは、競合他社のSoCを上回るパフォーマンスが高い評価を受けている。だが実は、アップルはグラフィック機能の大幅な世代交代を計画していたものの、「前例のない」失策によって断念されたとの噂が報じられている。

独自の情報源を持つニュースメディアThe Informationによると、アップルのエンジニアはiPhone 14 Pro用に当初設計されていたGPUは、レイトレーシング(光源の方向や光量を計算し、現実と同様の反射などを再現する技術)機能を追加するなど「あまりにも野心的だった」とされている。

そして試作機ではシミュレーションでの予想を遙かに上回る高い消費電力となり、発熱の問題も発生したという。その結果、iPhone 14 Proでは採用できなかったとのことだ。このGPUの欠陥は開発期間の後半になって発見され、前年のiPhone 13に搭載されたA15 BionicのGPUに大きく戻す作業を急がざるを得なかったそうだ。

レイトレーシングは、最新のゲーム機には(一部を除いて)標準実装され、スマートフォンに欠けているグラフィック技術である。今年6月、Armが新フラッグシップGPU「Immortalis」でレイトレーシング機能をハードウェア上でサポートすると発表していたのも、それに自覚的だったからだろう。これまでモバイルで採用を避けられてきた理由は、主に「電力消費が多い」からと思われるが、アップルもその罠にはまってしまったのかもしれない。

このミスにより、アップルはGPUチームを再編し、一部のマネージャーをプロジェクトから離脱させたとのこと。さらにAppleシリコンの性能向上に貢献したと思しき重要人物も退社することになったという。

このエピソードは、これまでiPhoneやiPad、Macに市場優位性をもたらしたAppleシリコン(独自開発チップ)の開発体制に亀裂が入った例として取り上げられている。GPUの設計ミスは「グループの歴史上、前例がない」と評されているほどだ。

その背景としては、ここ数年、同社のトップクラスのチップ技術者が次々と去っている事情が指摘されている。たとえば2019年には、プラットフォームアーキテクチャ担当シニアディレクターだったジェラルド・ウィリアムズIII氏が退職。同氏は、iPhone 5sのA7からiPad Pro(2018)搭載のA12Xまでの開発をリードしていた1人である。

その後任にはマイク・フィリッポ氏が起用されたが(Armからの引き抜き)、今年初めにマイクロソフトに移籍したと報じられた 。それ以降、アップルは後任を選んでいないという。

またThe Informaitonによると、アップルは半導体スタートアップがほとんど失敗するというプレゼンを社内エンジニアらに見せて、外部への頭脳流出を減らそうとしたそうだ。

なお、上記のウィリアムズ氏が起業したNuviaは、後にクアルコムに買収され、M2チップ対抗CPUコア「Oryon」開発の主力となっている。まだOryonの実力は未知数とはいえ、アップルも「第2のNuvia」の芽を摘んでおきたいのかもしれない。

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