非Webkitブラウザ解禁日に備えて
アップル規約違反のiOS版Chrome、挙動が明らかに
先月初め、Googleは、現在のApp Store規約に違反するiOSブラウザを開発中であると明らかにしていた。アップル純正のブラウザエンジンWebkitを用いず、自社のBlinkエンジンを使ったものである。もちろん2023年3月の記事執筆時点では、App Storeで公開することはできない。
このiOS用Blinkエンジン版Chromeについて、初めてテスト版の動作が確認されたと報じられている。
こうした動きの背景には、アップルのWebkit義務づけに対する逆風が世界的に強まっている事情がある。たとえばソフトウェア開発者らが反発し、英規制当局と連絡を取り合っていたり、米バイデン政権がIT大手による自社ブラウザエンジン強制を禁じる法案を勧告されてもいた。
実際、アップル社内でもWebkit強制の撤回を検討しているとの報道もある。それを先取りし、GoogleのほかMozillaも、自社エンジン版ブラウザを開発していると見られている。それぞれ公式に解禁される前に、WebKit/Safari版との挙動の違いを確認し、将来に備えておけるというわけだ。
米9to5Macによると、このプロジェクト発表から数週間にわたり、Google(およびChromiumに貢献しているオープンソースコンサルタント企業Igalia)は、iOS上で簡素化された「content_shell」ブラウザを稼働させ、問題の修正に取り組んできたという。
そのバグ修正の一環として、一部の開発者がiPhone 12上で動くBlink版ブラウザのスクリーンショットをシェアしたことがあるという。ここから、テスト版の挙動が流出した(機密保持契約違反の疑いもあるが)わけである。
これらの画像を見るかぎり、Google検索が想定通りに動き、目立った問題は生じていないようだ。ページ上部にはアドレスバーと「戻る」「進む」「更新」といった基本操作を含む青いバーが表示されているが、現在のiOS版(Webkit版)Chromeとは別物である。
さらに9to5Macは、Xcode Simulator(統合開発環境Xcodeに付属するiOSシミュレーター)上で試作ブラウザを自らビルドし、様々なサイトを表示することができたとも伝えている。その結果、アドレスバーの横にある3つのドットは、性能テストを支援する「Begin tracing」ボタンのあるメニューを呼び出すものだと分かったそうだ。
このスクリーンショットを見ると、すでにBlink for iOSプロジェクトが目覚ましい進展を遂げていることは明らかだ。
もっとも一部の開発者からは、サイトによってはブラウザがiPhoneで動作しているかどうかをチェックし、Safari/WebKitで使えない機能が無効化されるとも報告されているそうだ。これを回避するため、ユーザーエージェント(デバイスやOS、ブラウザの種別をWebサーバーに知らせる文字列)をAndroidに偽装するという話も出ているという。
こうした問題や、Webkit版との挙動との違いを早期にあぶり出すことは、Blink版Chromeの順調なスタートダッシュや速やかな普及には欠かせない。それはサイト運営側にとっても当てはまることで、ともに“事実上の標準”といえるスマートフォン・iPhoneとWebブラウザ・Chromeの更新に備えておくことは必須だろう。
すでにGoogleは、プロトタイプ版Blinkブラウザのビルド方法を公式に説明している。Macが必要となるが、興味や利害関係のある人は試しておいてもよさそうだ。
- Source: 9to5Mac