非Webkitブラウザ解禁を見越した準備?

Google、アップル規約違反のiOSブラウザを開発中

Image:Koshiro K/Shutterstock.com

GoogleのChromium(ChromeのベースとなるオープンソースのWebブラウザ)開発者が、アップルのApp Storeガイドラインに反するiOS向けブラウザに実験的に取り組んでいることが明らかとなった。

現在、iOS向けのウェブブラウザについては、サードパーティであれ、アップル純正のブラウザエンジンWebkitの使用が義務づけられている(App Store Reviewガイドライン2.5.6)。macOSやWindows向けChromeはChromiumベースだが、iOS版はWebkitを使わざるを得ず、アップル製のSafariと似た挙動となっている。

そんな中、もっかChromium開発者が取り組んでいるものは、GoogleのBlinkエンジン(iOS以外のChromeやMicrosoft Edgeに使用)を使っている。これをApp Storeで公開しようとしても、アップルの審査を通過することはあり得ないだろう。

開発者はバグレポートで「この実験的なアプリケーションは(中略)グラフィックスと入力の待機時間を測定するために使用」し、「出荷可能な製品のバグではない」として、社内の実験であることを強調している。またGoogle広報担当者も「これはiOS上のパフォーマンスの特定の側面を理解することを目的に、オープンソースプロジェクトの一環として開発している実験的なプロトタイプ」「ユーザーに提供されることはないし、我々はアップルのポリシーを遵守していく」とコメントしている。

それでも、この実験的なiOSブラウザ開発は、近い将来にアップルがApp Storeの規約を変更することを見越した動きかもしれない。同社の慣行は全世界で独禁当局から監視されているが、その1つがWebkitの使用義務づけだとみられているからだ。

たとえば米バイデン政権も、アップルのようなハイテク大手を「ゲートキーパー」(ユーザーを囲い込む力を持つ企業)と見なし、自社ブラウザエンジンの強制を禁じる法律を勧告されている。そうした事情から、アップル社内でWebkitの使用義務づけ撤回を検討しているとの報道もあった

米政府と同様の動きは、英国、オーストラリア、日本およびEUでも起きている。それらをGoogleは織り込んだ上で、将来BlinkベースのiOS用ブラウザをリリース可能になった際に、他社に先がけてスタートダッシュを切る準備を進めているのかもしれない。

現在のWebkit義務づけは、ユーザーにとっても必ずしも好ましいものではない。WindowsやAndroid版Chromeの新機能がiOS版では数ヶ月~1年遅れとなることも珍しくはなく(逆もあるが)、標準技術であるWebXR APIにWebkitが対応しないため、アップルがAR業界進歩の足かせになっているとの批判もあった。今後の展開を見守りたいところだ。

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