数々の最新技術を投入したパネル採用か

有機EL搭載iPad Proは「大幅値上げ」の可能性。パネルコスト増により

Image:Dohma48/Shutterstock.com

アップルが有機ELディスプレイ搭載iPad Proを2024年に発売することは有力視されており、パネル生産をサムスンとLGが準備中との報道もあったほどだ。

これまで価格の情報は乏しかったが、有機ELパネル製造がコストのかかる新規工程を含むため、同サイズの有機ELデバイスよりも大幅に高価になる可能性があると報じられている。

次期iPad Proモデルは従来通り2種類だが、それぞれ画面サイズが11インチから11.1インチ、12.9インチから13インチに微増すると見られている。韓国の電子業界情報誌The Elecによると、有機パネルが材料費のなかで最も大きなウェイトを占めるとのことだ。

また同メディアによると、iPad用有機ELパネルの価格は既存の同じサイズよりも2~3倍に達するという。なぜなら「ツースタックタンデム構造」や「LTPO TFT」など高度な技術を使うためだ。

ツースタックタンデム構造とは、赤、緑、青の発光層を2段重ねにする方式のこと。ディスプレイ専門アナリストRoss Young氏は、この技術が従来方式よりも輝度の向上や画面の長寿命化、消費電力を約30%削減でき、最大120Hzを実現するProMotion(可変リフレッシュレート)にも対応可能だと説明していた

そしてLTPO TFTとは、ディスプレイの駆動素子を制御するバックプレーン技術の1つ。これにより電力効率を高めつつ、ガラス基板に柔軟な有機EL薄膜を封入したハイブリッド有機EL構造で、パネル全体の薄型化を実現するとのことだ。

数々の最新技術を投入したiPad用パネルは当然ながら高価となり、既存の10インチ用有機ELパネルが100~150ドルに対して、11.1インチと13インチの製造コストはそれぞれ270ドル(約3万6000円)および350ドル(約4万8000円)近くになるという。

アップルはこれらコスト増の一部を消費者に転嫁、つまり小売価格が大幅に高くなる可能性があるとのこと。通常の液晶ディスプレイを搭載した11インチiPad Proは799ドル~、ミニLEDバックライト画面の12.9インチiPad Proは1,099ドル~だが、特に「液晶から有機EL」へと飛躍が大きい11インチから11.1インチの値上げ幅が顕著になりそうではある。

ほかThe Elecは、サムスンが第8世代の有機EL生産ラインに投資を決定し、第6世代パネル(有機EL版iPad Proに採用)よりも「理論上」低コストになる見通しだという。そして将来の有機EL版MacBookは第8世代ラインで製造される可能性が高いとのことだ。

もともと高価なMacBook Proであれば、ディスプレイのコスト増を価格に上乗せしやすいだろう。だが、有機EL搭載モデルの候補としてはMacBook Airも挙がっており、コストを抑える必要が大きいはず。アップルとサムスン等の韓国有機ELメーカーとの価格交渉は、すでに始まっているのかもしれない。

関連キーワード: