「iPhone 15 Pro」値上げか、TSMCが損するか
TSMCの半導体値上げ、アップルが拒否したと報じられる
世界最大手の半導体ファウンドリ(受託製造)、TSMCの最先端チップ技術を使うと、一般的には多額のコストがかかる。同社はまもなく3nm製造を開始する見通しだが、それに伴う値上げ要求に対して、最大手の顧客であるアップルが拒否したとの噂が報じられている。
アップルからの受注はTSMCの年間売上高のうち25%以上を占めると推定され、価格に関する発言力もそれだけ強いと思われる。台湾の経済メディア・経済日報によると、当初TSMCは先端プロセスについては6~9%程度の値上げを行う予定だったという。その後、成熟プロセスでは3~6%上げると噂されていたそうだ。
しかし、アップルはその値上げを拒否しているとのこと。業界関係者は、TSMCの値上げは同業他社と比べてそれほど高くなく「仏心」とさえ言える水準だとコメントしている。だが、ちょうど半導体市場が過熱から一転して冷え込んでいるため、顧客から抵抗され、負担を分かち合うことや譲歩を求める声も上がっているという。
この噂話は、次期14/16インチMacBook Proに搭載されるプロセッサー「M2 Pro」や「M2 Max」が、先代のM1シリーズチップと同じ5nmに据え置かれる、との予想とも符合している。有名アナリストのMing-Chi Kuo氏は、TSMCの「3nm製造が2023年前半から収益に貢献する」とのガイダンス(収益見通し)に基づいて主張していたが、技術的に3nmでの量産は可能になっていても、アップルが値上げをはねつけたと考えれば、辻褄が合いそうだ。
アップルとTSMCの価格交渉が難航すれば、ひいては2023年のiPhone 15 Pro用の「A17 Bionic」や、次期MacBook Airなどに搭載される「M3」プロセッサーへの影響も懸念されるところだ。これらのチップはTSMCの第2世代3nmプロセスでの製造が予想されており 、第1世代3nm技術よりもコストが大幅に上がるはずだからだ。
もしもアップルがTSMCの値上げを受け入れたなら、「iPhone 15 Pro」や「iPhone 15 Ultra」に上乗せされて、iPhone 14世代よりも一段と割高になる可能性がある。もし先代モデルと同程度の価格にするのであれば、アップルの利益率が大きく減るか、ないしはTSMCが製造コストを吸収させられる(損を被る)ことになりそうだ。