トランプとマスクの蜜月状態がいつまで続く?

米政府、中国向けチップ輸出規制をさらに強化。米企業やサムスンにも悪影響か

Image:Kritsapong jeantaratip/Shutterstock.com

米バイデン政権は AI向け高帯域幅メモリ(HBM)チップと半導体装置の中国向け輸出に新たな制限を課すと発表した。具体的には「24種類のチップ製造機器と3種類のソフトウェアツール」、および「シンガポールやマレーシアなどの国々で製造されたチップ製造装置」の販売を阻止する狙いとのことだ。

これは先月、台湾の半導体製造大手TSMCに対して、中国向けに先進的なAIチップの出荷停止を命じたことに続くものだ。

Reuters報道によると、米国の技術へのアクセスを制限する企業リストに、新たに24社以上の中国の半導体企業や、100社以上のチップ製造機器メーカーと2社の投資会社も追加される予定とのこと。これには、長年にわたり米政府から制裁を受けている中国ファーウェイと「協力」している多くの企業が含まれている。

またWashington Post紙は、外国製品に米国製チップが「1つでも」含まれていれば、その製品は輸出制限の対象になると報じている

もっとも中国に対する輸出規制の強化は、中国以外の企業にダメージを与える可能性がある。米国内ではLam Research、KLA、アプライド・マテリアルズ、マイクロン・テクノロジー、オランダでは半導体製造装置メーカーのASMLといったところだ。さらに韓国ではサムスン電子が「唯一」の規制対象になるとの予想もあり、Reutersは「同社の売上高は約20%が中国から」と指摘している。

レイモンド商務長官は、今回の追加規制が「中国が軍事近代化のために国内の半導体製造システムを発展させる」ことを防ぐのに役立つと述べている。が、アナリストや「複数の米政府高官」はWashington Postに対し、過去2回の輸出規制よりも「はるかに実効性がない」と語っている。

さらにアナリストらはThe Wall Street Journalに対し、この規制は6月頃に策定されており、発動にも時間がかかりすぎたと述べている。その数ヶ月間に、中国は大量に備蓄する時間があったというのだ。例えば、アプライド・マテリアルズは7月28日までの9か月間、中国向けに出荷した製品の純利益が86%も急増している。

また戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・アレン氏は、今回の規制には「ファーウェイや中国企業が利用できる抜け穴が残されている」とコメント。また、HBMチップの旧版や様々なチップ製造設備を制限していないことも指摘している。

中国外務省の林剣報道官は記者会見にて、米国が世界的なサプライチェーンを混乱させていると非難し「自国の企業の権利と利益を守るための措置を取る」と付け加えている。

そもそも現在の対中輸出規制は、次期大統領のトランプ氏がファーウェイや関連企業をエンティティリスト(特定の米国製品や輸出が制限される企業のリスト)に入れたことで始めたものだ。バイデン氏とは多くの政策が異なるトランプ氏だが、中国への強硬姿勢は引き継ぐと見られている。

しかし、1つだけ未知数があるとすれば、イーロン・マスク氏の存在だろう。トランプ氏の選挙に多額の資金を提供したマスク氏は(Xでもアルゴリズムを「微調整」した疑惑がある)中国での自らのビジネス上の利益を守るかもしれない。

もっとも、2人の中国に対するスタンスが大幅に異なった場合、それが両社の「ブロマンス」を終わらせる可能性があるとの指摘もある。そもそも石油産業を活性化させたいトランプ氏とEV企業のテスラを率いるマスク氏が、いつまで蜜月状態でいられるのかは興味深いところだ。

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