Apple Watchへの血糖値センサー内蔵は数年先との予想

Apple Watch+血糖値モニター、糖尿病患者の命を救う

Image:KANUT PHOTO/Shutterstock.com

Apple Watchが人の命を救った(正確には「きっかけとなった」)事例は数多くあるが、米CNETの上級ビデオプロデューサーで糖尿病患者のJustin Eastzer氏が低血糖によるピンチを助けられたと語っている。ただし、持続グルコースモニター(GCM)との組み合わせによって、である。

Eastzer氏は1型糖尿病(すい臓のインスリンを出す細胞が自己免疫により壊される病気)で、血糖値を測定するCGMを装着しているという。血糖値が危険なほど低くなると気を失ったり糖尿病性昏睡に陥ることもあるため、CGMをApple Watchに接続し、手遅れになる前に通知を受け取るシステムを使っているそうだ。

数ヶ月前、Eastzer氏はこの機能により命が救われたと述べている。Apple Watchから危険なほど血糖値が下がっているとの通知を受けて目を覚まし、急いで冷蔵庫に走ってオレンジジュースを手に取り、飲んだ後に気を失った。

それから数分後に目が覚めたのは、血糖値が正常に戻ったからだ。あれは人生で最も恐ろしい瞬間の1つだったが、Apple Watchが警告してくれたおかげで、手遅れになる前に低血糖に対処できた……Eastzer氏はそう感謝を語っている。

従来型の血糖値モニターは一定時間ごとに(指先などから)採血する必要があったが、CGMは皮下に細いセンサーを刺したままにしておき、持続的に測定する。このデータがスマートフォンやスマートウォッチのコンパニオンアプリに送られ、測定値が高すぎたり低すぎたりすると、アラームが鳴る仕組みとなっている。

今のところCGMは外付け機器となっているが、Apple Watchに同様の血糖値センサーを内蔵する方法が研究されているとの噂は、何度も報じられてきたことだ。具体的には非侵襲性、つまり「注射器で採血せずに手首に装着したデバイスで測定する方法」が社内で研究されていると言われている。

実際、アップルはそうした技術をもつ英スタートアップRockley Photonics社とも取引関係がある。同社はスマートウォッチの背面から赤外線を照射して血圧や血糖値、血中アルコール濃度などを読み取る次世代センサーを開発していることや、アップルと継続的な「供給・開発契約」を締結していることを明らかにしていた

またティム・クックCEOも血糖値モニターらしき機器を着けている姿が目撃されたほか、スティーブ・ジョブズがCEOだった時代からウェアラブル機器での血糖値モニタリングが構想されていたとの噂もある

すでに足かけ10年は研究されているはずだが、アップルにとっても血糖値モニターをApple Watchに内蔵することは難しく「数年先」との予想もあった。非侵襲型の血糖値モニター機器は、測定のたびに身体を傷つける苦痛を取り除くことで「健康測定機器の聖杯」とも言われており、その一番手としてアップルが名乗りを上げることを期待したいところだ。

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