運転席には誰もいません
自動運転レースカーが時速318kmの最高速度記録を樹立。ミラノ工科大のソフトウェアが貢献

ケネディ宇宙センターで行われた自動運転レースイベントで、ミラノ工科大学が開発したソフトウェアを使用する無人のマセラティMC20クーペが、時速197.7マイル(時速318.2km)を記録し、自動運転による世界最高速度記録を更新した。
これまでの最高速度記録は、米国のオープンホイールレーシングシリーズ「インディカー」の下位カテゴリーである「インディライツ」用車両を改造した自動運転車によるレースを行う「Indy Autonomous Challenge(IAC)」のマシンを使い、ミラノ工科大学(POLIMI)、ミシガン州立大学(MSU)、アラバマ大学の合同チームであるPoliMOVE-MSUが記録した時速192.2マイル(時速309.3km)だった。
それ自体が大きな成果だが、それ以上に自動運転システムのストレステストを兼ね、非常に高速で走行する最中に、クルマをどのように制御するかを判定するのが目的だった。チームは、このチャレンジで得られたデータや学びを、公道を走行する自動運転車にフィードバックし、その安全性を向上させたいと考えているとのことだ。
IACとそのスピンオフ企業Aidoptation BVのCEO、ポール・ミッチェル氏は「私たちはAIによるソフトウェアドライバーと、ロボット工学による自動運転ハードウェアを極限にまで押し上げようとしています。公道用車両にその技術を持ち込むことは、高速道路での安全や安心、持続可能な高速自動運転車両を実現する目的のために、自動運転レースの学びを移行させるのに役立っている」と、今回の記録達成のプレスリリースでコメントしている。
今回の速度記録はマセラティのMC20を自動運転仕様に改造した車両によって打ち立てられた。出力630hp(639ps)、3リッターV6エンジンをミッドに搭載し、最高時速325km、 0 – 100km/h加速2.9秒という運動性能を持つ高級スポーツカーは、われわれ一般人には高価すぎて手が届かないものではあるが、そこに注ぎ込まれた自動運転技術はこのクルマだけでなく、今後の自動運転車とADASシステムの進歩の基盤となり、自動運転車の普及に向けた先進技術の開発を加速することになるだろう。

ちなみに、Indy Autonomousu Challengeと同様の取り組みとしては、日本のスーパーフォーミュラ用車両をベース車両として用い、アブダビで立ち上げられたAI自動運転レースシリーズの「A2RL」がある。今回の記録は最高速度の更新だったが、自動運転で高速走行しながら、さらに他の車両との接触を避けつつ本格的なレースを行うまでには、まだまだ技術の進歩が必要であることは否めないのが実際のところだ。だが、IACもA2RLも、そこで培われた技術が将来の自動運転車に役立つものになることは間違いない。