CES会場にてデモが実施
Qi2 “v2.1” でサポートした「ムービングコイル」とは何か? 担当者に聞く詳細
ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(Wireless Power Consortium、WPC)は1月はじめ、米ラスベガで開催された国際エレクトロニクス展「CES 2025」に合わせて、ワイヤレス充電規格「Qi2」の最新バージョン “v2.1” を発表した。
Qi2は、マグネットを使用することで、デバイスと充電器の位置合わせを容易にする「MPP(Magnetic Power Profile)」をサポートするワイヤレス充電規格。2023年初に発表され、ようやく対応製品が増えつつある。当時はアップルがMagSafe技術を提供したことからも話題になった。
新たに発表されたQi v2.1では、Qi2の「拡張機能」という扱いで、ムービングコイルによる充電もサポートするようになる。これはパナソニック オートモーティブシステムズ(株)の技術を元にしており、充電コイルをスマートフォンに合わせて動かすというものだ。MPPと同じく、最大15Wの出力をサポートする。
ワイヤレス充電においては、スマートフォンに搭載されたコイルと、充電器側に搭載されたコイルとの位置関係が重要だ。この距離が離れていると発熱も大きくなるし、充電速度(充電時のワット数)も上げることが難しくなる。これを解決するアプローチとして、MPPではマグネットで正確に位置合わせする方法を採っていた。
v2.1で追加されるムービングコイルは、スマートフォンのコイルの位置を正確に検出し、それに充電器側のコイルを動かすことで、MPPと同じように正確な位置合わせを目指すものだ。つまりアプローチは違うが、何らかの方法でコイルの位置合わせを行うというという点では同じとなる。
テストサービスを提供するGranite River Labs社の技術ブログによると、Qi2ではMPPの位置合わせの精度を「2mm以内」と定めているという。そして、ムービングコイルの精度はMPPと同様だとWPCは説明している。
CES会場のWPCブースで話を伺ったパナソニック オートモーティブシステムズの説明員によると、ムービングコイル自体は車載向けとして展開しているもので、同社は10年以上前から開発・製品化してきたという。すでに多くのクルマに採用されている。
ただしこれまでの製品では、従来のQi規格である、EPP(Extended Power Profile)およびBPP(Baseline Power Profile)をサポートするモデルとなっていた。BPPは2010年に発表された初代Qiからの規格(最大5W対応)、そしてEPPは2015年に発表され、最大15Wまで対応した規格となる。
同社のムービングコイルは、検出コイルから1MHzのパルスを送信し、スマートフォンからの応答を受信することで、スマートフォンのコイル位置を特定する仕組み。特定した位置に充電用のコイルを動かすことで、スマートフォンへの充電が開始される。後方互換性も持っているため、CES会場に展示されていたデモでは、Qiに対応する従来のスマートフォンやワイヤレスイヤホンも充電できた。
Qi2へのムービングコイルのサポート追加は、パナソニック オートモーティブシステムズからの働きかけによって実現したそうだ。同社の今後の車載向け製品では、Qi v2.1に対応していくことになるのだろう。
また担当者によると、あくまでQi v2.1で定められている精度は規格としてのものであり、パナソニック オートモーティブシステムズでは車載向けの信頼性を確保するという点から、さらに厳しい精度を実現しているという。
ちなみに同社のムービングコイル技術の過去には、パナソニックが培ってきたCDデッキのアセットがあるという。CDデッキではピックアップで光を捉える必要があり、これがムービングコイルの「座標を合わせて動かす」ことと親和性がある。実際、ピックアップの位置精度の制御をしていた技術者のアルゴリズムも活用しているとのこと。
なお、Qi v2.1でサポートしたムービングコイルについては、車載向けなどと記載しているわけではないので、他社がムービングコイルを使った充電器を投入する可能性はあり得る。車載以外での展開など、今後の動向に期待したいところだ。