ありふれた技術を組み合わせただけ

Metaのスマートグラスで「見知らぬ人を顔認識、名前や住所も特定」デモを学生が実演

Image:Tada Images/Shutterstock.com

カメラが人や物体を捉えると、そのデータが瞬時に映し出されるマシンビジョンは『ターミネーター』などSF映画の中でこそ他人事で見ていられるが、実現すれば悪夢になりかねない。そうしたディストピアじみた光景を、米ハーバード大学の学生2人が、スマートグラスと顔認識技術を使って出現させたデモが公開されている。

その1人であるAnhPhu Nguyen氏は、実演を撮影した動画を公開している。この「I-XRAY」と名付けられた技術は、MetaのRay-BanスマートグラスがInstagramにライブストリーミングする機能を活用したものだ。

独自開発のプログラムがそのストリームを監視し、AIにより顔を識別する。その写真を大規模言語モデルがウェブ等にある公開データベースに照合し、名前や住所、電話番号、さらには親族まで特定する。それら情報はスマホアプリにフィードバックされ、手元で確認できる仕組みだ。

デモはNguyen氏がメガネをかけ、もう1人のCaine Ardayfio氏が撮影したものだ。そこでは、複数のクラスメートの住所や親戚の名前をリアルタイムで特定する様子が確認できる。さらに2人は、公共交通機関で全く見知らぬ人々らと話し、I-XRAYから情報を引き出し、まるで旧知の仲のように振る舞っている様子も映し出されている。

このI-XRAYはゼロから開発したものではなく、いくつかの既存の技術を組み合わせたものに過ぎない。その1つが、かつてNew York Timesが「驚くほど正確」で「誰でも使える」顔認識検索エンジンと評したPimEyesである。

今回のデモが目新しいのは、日常に溶け込む消費者向けガジェットを使っている点である。Nguyen氏らも、Metaのスマートグラスを選んだ理由の1つに「通常のメガネとほとんど見分けが付かない」ことを挙げている。

オンラインメディア404 Mediaに対し、2人は現在の技術で何ができるかを人々に認識させるためにI-XRAYを開発したとして、使用したコードは公開しないと述べている。

Nguyen氏によると、この技術を見せた人の中には、友人にいたずらをしたりするために使うかもしれないと言ったり、深刻な安全上の懸念を指摘した人もいたという。

これと合わせて、I-XRAYの一部を説明するGoogleドキュメントも公開されている。そこでは、I-XRAYが利用したサービスから自分の情報を削除する方法も詳しくガイドしている。

この件につきThe Vergeが問い合わせたところ、Metaはスマートグラスのプライバシーポリシーを引用したという。そこでは「他人の意思を尊重する」ことや「スマートグラスの操作中は、これから撮影することを言葉や手振りではっきりと伝える」よう注意を呼び掛けている。

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