TSMCの3nmプロセス製造が安定してきた?

「iPhone 16」シリーズのA18とA18 Pro、実は完全に別設計?チップのサイズとSLCキャッシュに違い

Image:Apple/YouTube

最新の「iPhone 16」シリーズのうち、標準モデルにはA18チップ、ProモデルにはA18 Proチップが搭載されているが、両チップはCPUコア数に差はなく、GPUコア数が1個違うに過ぎない。そのため、どちらも設計は同じであり、「製造したA18 Proチップのうち、低品質なものがA18にされる」(いわゆるチップビニング)と推測されていた。

しかし、有志がダイショット(チップの内部構造を撮影した画像)を比較したところ、A18はA18 Proをベースにしたものではなく、完全に別設計の可能性があると明らかになった。

テック系YouTuberのHigh Yield氏によると、A18 Proのダイサイズは105mm²に対して、A18は90mm²だったという。ダイ面積を広くすることで、より大きなSLCキャッシュ(データの読み書きを高速化する)とGPUコアを追加できていると画像でも確認できるだろう。

これまでもA18とA18 Proが同じCPUコア数であるにもかかわらず、なぜかベンチマーク結果は異なっていた。それも、SLCキャッシュ容量の差である程度の説明はつきそうだ。

また、前A17 Proのダイサイズは103.8mm²であり、A18よりも大きく、A18 Proよりもわずかに小さいことも注目すべきだろう。

A17 ProはTSMCの第1世代3nmプロセス技術「N3B」、A18/A18 Proは第2世代の「N3E」により製造されているが、後者は前者よりも歩留まりが改善されている一方で、トランジスタ密度が低い。そのため、A18 Proはトランジスタ数を増やすため、ダイサイズをA17 Proよりも大きくせざるを得なかったと推測される。

とはいえ、A18 Proの105mm²というサイズは決して大きくはない。そしてA18とA18 Proが別設計のチップである可能性が高いことから、N3Eの歩留まりも十分だと思われる。iPhone 16シリーズの正式発表前からA18/18 Proは別設計だと噂されていたが、それが裏付けられた格好だ。

詳細な検証で知られるテック系YouTubeチャンネルGeekerwanは、A18 Proは現時点で世界最速のモバイルチップであり、M2およびM4にわずかに及ばないだけだと結論づけていた。今のところiPhone 15 Proのような過熱の症状も聞こえてこず、TSMCの3nm技術も2世代目にして安定性を増しているようだ。

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