製造コストのわりにユーザーは進化を実感しにくい?

iPhone 15 Pro Max、感圧式ボタンを備えた初期プロトタイプ写真が公開

Image:AppleInsider

iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxの製品版では、電源ボタンや音量ボタンが通常の機械式ボタンとなっていたが、もともとは物理的に動かない感圧式ボタンを搭載する計画だったが中止になったと噂されてきた。従来は上下2つに分かれていた音量ボタンが1つになる、という具合だ。

それが本当だったと裏付ける、iPhone 15 Pro Maxの初期プロトタイプと称する写真が何枚か公開されている。

米AppleInsiderは「アップル試作機のコレクター」からiPhone 15 Pro Max EVTバージョンの写真を入手したと主張している。

EVTとは「Engineering Validation Test」(エンジニアリング検証テスト)の略であり、製品が基本仕様通りに動くか検証することだ。一般的に製品の検証プロセスはEVT→DVT(デザイン検証テスト)→PVT(生産検証テスト)の順に進められ、正式な量産に至る。そのなかでEVTは、最初期の段階に位置づけられる。

この試作機はデバイス識別子「D84」が付けられ、開発プロジェクトコード名は「Veryon」だったとのこと。2023年4月にEVT段階で中止となったため、感圧式ボタンを搭載した最後のプロトタイプになったと伝えられている。

この感圧式ボタンは、押されるたびにクリック音とともに触覚フィードバック(振動)を生成するという。それによりMacBookのトラックパッドのように、機械式ボタンの触覚と音を擬似的に再現しようとしたと推測されている。

これらのボタンは押すとある程度は動き、従来の機械式ボタンに似ているという。ただし電源ボタンの場合、デバイスがオフになっていてバッテリーが完全に消耗している場合は触覚フィードバックはない。要は、振動もクリック音もないとのことだ。

Image:AppleInsider

ソフトウェアに関しては、DVT版iPhone 15 Pro MaxはiOS 17のInternalUIビルドが動いているとのこと。InternalUIビルドとは、アップル内部のみで使われ、正式リリース版にはない機能を備えているバージョンだ。

このDVT段階で、iPhone 15 Proモデルは感圧式ボタンを従来の機械式ボタンに置き換えたと伝えられている。つまりDVT版やそれ以降のプロトタイプは、製品版と比べて見かけの違いはなく(DVT版音量ボタンの内蔵センサーは感圧式だが、ボタンの表面は上下に分割)面白みに欠けているようだ。

かたやiPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxに搭載されたアクションボタンは、DVT段階でも機械式であり、製品版は試作機よりも丸みを帯びて幅広になる程度の変更にとどまっている。

幻に終わった感圧式ボタンは、フレクシャゲージとひずみゲージを介して圧力を検知、電気抵抗の変化をロジックボードに伝達。これによりボタンが押された場所に基づき、音量の上げ下げを判断するというもの。触覚フィードバックのために「Bongo Haptic Engine」という特製モーターも投入した複雑な仕組みだったようだ。

しかし、ユーザーから見れば従来どおり「音量ボタンの上下を押し込む」ことに変わりはなく、進化は実感しづらいだろう(物理的に動く部分が減ることで故障しにくくなり、本体の開口部がなくなって防水性能は向上するはずだが)。アップルも製造コストに見合わないとして、プロジェクト中止に踏み切ったのかもしれない。

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