競合他社が3nmチップを手にした頃、iPhoneは2nmチップに?
TSMC、まもなく2nmチップ試験生産を開始。またもアップルが全容量を確保か
iPhoneやMacのチップを独占的に製造する台湾TSMCは、次世代2nmチップの試験生産を来週(7月15日~)から開始すると韓国ET Newsが報じている。これは予想よりもかなり早く、2025年モデルの「iPhone 17 Pro」等にとって好材料である。
TSMCは一貫してプロセスルール(半導体の回路線幅)の微細化で世界をリードしており、アップルは最大手の顧客である。昨年、同社はアップルに2nmチップ試作品を披露するとともに、メディアの取材には「2025年の量産に向けて起動に乗っている」と回答していた。
ここでいう試験生産とは、実際の量産前に少量のチップを作り、問題を洗い出して製造プロセスを最適化するためのテストを行うことだ。早くとも10月までは始まらないと予想されていたため、7月のスタートは順調に推移している良い兆しである。
現地メディアによると、TSMCは台湾北部の宝山工場に2nm製造施設を搬入・設置し、第3四半期(10月~)には試験生産に入る予定とのこと。量産前に安定した歩留まりを確保するため、スケジュールを前倒しにしたとみられている。
先端半導体の製造において、歩留まり(良品と判断されたチップの割合)は最大の課題の1つである。昨年7月、TSMCは3nmチップの歩留まりが55%に留まり、アップル以外の発注に応じることができなかった。
この2nmチップが正式な量産に入った場合、真っ先に恩恵を受けるのはアップルだろう。昨年も、当時の最先端だったTSMCの3nmチップ製造能力をiPhone 15 ProとMac用M3チップのため全て確保したとみられており、今年5月にも同社の幹部がTSMCを訪問して2nm全供給を抑えようとしていると報じられていた。
もともと2nm製造の進捗が危惧されていたのは、GAA(Gate-All-Around)技術の初採用にともなう技術的な課題の解決に苦戦すると予想されたからだ。
これはゲートが半導体チャネルを全面的に囲い込むことで不要な電流の漏れを減らし、電力効率を向上させる技術だ。高い集積度・消費電力の削減・高性能に繋がり、単にプロセスルールを微小化する以上の改善が期待できる。
今年秋の「iPhone 16」シリーズは全モデルとも第2世代3nmチップ「A18」を搭載すると予想されている。しかし、目玉機能のApple Intelligenceが日本に提供されるのは2025年以降であり、2nmチップへの移行もiPhone 17シリーズになる可能性が高いことから、新型iPhoneの購入を検討している人にとっては悩ましいところではある。