フアン氏が共同CEOを要求して破談になったとのこと

AMDがNVIDIAを買収寸前だった瞬間があると元従業員が証言

Image:jamesonwu1972/Shutterstock.com

半導体大手NVIDIAの時価総額は、生成AIブームのなか一時的に世界首位に躍り出たものの、その後に調整局面に差し掛かり落ち着きを見せている。それでも投資家の人気が衰えないなか、AMDの元従業員が、かつて同社がNVIDIAを買収しかけたことがあると語っている。

エンジニアのヘマント・モハパトラ(Hemant Mohapatra)氏がAMDに在籍したのは、インテルが半導体業界の王座に君臨し、AMDが果敢に戦いを挑んだ2000年代のことだ。当時AMDの株価は40ドル程度(2024年7月現座は約170ドル)だったが、先んじて64ビットチップ(AMD64アーキテクチャ)を投入したことで最初の大きな成功を収めたという。

だが、その後にAMDは純粋なデュアルコアチップ開発にこだわったため、過ちを犯したとのこと。その間にインテルは2つのコアをインターコネクトで接続し(純粋なデュアルコアではなく、2つのチップを1つとして機能させる)デュアルコアプロセッサーと称して先んじたとの趣旨を述べている。

さらにAMDはCPUのコア数を4つ(クアッド)や6つ(ヘキサ)と増やし攻勢を強めていくが、その一方で2006年、グラフィックカード企業のATIを54億ドルで買収。ブランドを「ATI Radeon」(後にAMD Radeon)と変更し、CPUとGPUを統合した「APU」を送り出して躍進の足がかりとした。

このATI買収は、AMD社内のエンジニアには評判が良くなかったという。その代わりにNVIDIAを買収するべきだったとモハパトラ氏は語り、実際にその動きはあったと振り返っている。当時、NVIDIAのCUDAソフトウェア(GPU向けの汎用並列プログラミングモデル)はニッチ市場向けと見なされ、ほとんどの開発者がOpenGLに集中していたにもかかわらず、そうしようと「試みた」とのことだ。

当時のAMDを率いたヘクター・ルイズCEOは、NVIDIAの共同創業者でCEOのジェンスン・フアン氏の「非常に長期的」な思考を評価していたという。しかしフアン氏は、CUDAアーキテクチャとNVIDIA製チップによる「ハードウェアとソフトウェアの統合」という戦略を貫くため、「共同CEOにならない限り売却することを拒否」したとのことだ。

この要求にAMDは「まばたき(驚きで目をパチパチさせる)」し、その結果「両社の将来の道のりは永遠に分裂した」と述べている。同社としては、NVIDIAをARMやインテルと「同格」とは考えなかったというわけだ。

それから十数年が経過し、NVIDIAの時価総額はインテルやAMDを抜き去っている。モハパトラ氏は同社が「自分たちの信念を貫いた」ことが今日の大成功に繋がっており、AIが軌道に乗ったとき「最終的に市場が追いついた」と語っている。

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