チャットボット化で永遠の命を?

中国政府、「AI習近平」を開発。習氏の著作や公的文書で訓練、習近平思想を普及か

Image:360b/Shutterstock.com

全世界で生成AIチャットボットのブームが起こった後、中国国内では厳しく規制されてきた。現地のApp StoreからはChatGPTスタイルのサービスを提供する100以上のアプリが削除され、中国製チャットボットに「習近平氏はいい指導者?」と尋ねると「安全審査に合格しませんでした」として話題をそらそうとする、といったところだ。

そんななか、中国当局が習近平氏の著書や論文により訓練した「習近平チャットボット」を開発したと英Financial Timesが報じている。

このチャットボットには習氏が自ら書いたとされる12冊以上の書籍や公式文献が訓練データとして使われたという。ほか、政府の規則や政策文書、国営メディアの報道、その他の公式出版物も訓練セットに含まれているとのことだ。

そのうち1つの文書だけで、習氏に関する言及が8万6000以上あり、「思想、政治、行動において、習近平総書記を中核とする党中央委員会と常に高い整合性を保つように」と市民に促す文言もあったと伝えられている。

このAI習近平は 、まだ国家インターネット情報弁公室(CAC)の管轄下にある研究センターで使用されているに過ぎないが、いずれはより広い範囲で使われる可能性がある。その機能は質問に答えたり、レポートを作成したり、情報を要約したり、中国語と英語を翻訳できる基本的なものに留まるが、政治、経済、文化に関する習近平の考えを広めることに使われそうだ。

この動きは、中国当局が習近平思想(ないし「新時代の中国の特色ある社会主義」思想)を広めるために大規模な取り組みを行っている最中のことだ。

習氏の著作は国内のブックフェアで主役となっており、莫大な印税が同氏に入っていると見られている(習氏が尊敬する毛沢東の「毛主席語録」の再現でもある)。テンセントやネットイースなどの人気ニュースアプリは国営メディアの記事をトップに表示し、そのほとんどが習氏を特集している。また子供達にも習近平思想の学習が義務づけられているため、チャットボットはそこで活用される可能性もある。

その一方で中国は、「亡くなった親族になり代わるチャットボット」の分野で最先端を走っている。そう考えると、習近平思想は個人の寿命を超えて時の終わりまで生きながらえるのかもしれない。

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