現地の法律に従うほか選択肢はなさそう

アップル、中国で「生成系AIアプリ」大量削除。当局の規制強化に先行か

Image:AS project/Shutterstock.com

すでに生成系AIがチャットボット等を通じて身近な存在となり、アプリストアでも関連アプリが隆盛を極めている。そんななか、アップルが中国当局の規制を先取りして、現地での「ChatGPTスタイルのサービス」を提供する「100以上」のアプリをApp Storeから削除したと香港メディアSouth China Morning Postが報じている。

中国のモバイルアプリ分析企業Qimaiの調査によると、これらのアプリはすべて8月1日に中国App Storeから削除されたという。その1つが、iFlyTekが開発したChatGPTスタイルのアプリ「Spark」。6月29日にリリースされたばかりで、中国App Storeの有料アプリチャートで9位に入っていたそうだ。

削除されたAIアプリの1つであるOpenCatの開発者は、アップルから「deep synthesis(ディープラーニングによる合成)技術や生成系AIに対する規制強化から、中国で違法とされるコンテンツを含む」ためだと通知されたことを報告している。

今回の中国App Storeでの生成系AIアプリ取締りは、中国で新たな規制が8月15日に施行される2週間前に行われた格好だ。今年4月に発表された規制の目的は「健全なコンテンツを促進」すると同時に「社会主義の中核的価値観を遵守」することと宣言されている。

アップルが世界各国での規制変更や政府からの要求に応じて、現地のApp Storeからアプリを削除することは珍しくない。特に、習近平政権による統制が強化されつつある中国では頻繁に起こっていることだ。

たとえば数年前にも、中国当局からの要求を受けて大量のゲームアプリが削除されたとのThe Wall Street Journal報道もあった。もともと中国では2016年以降、アプリストア公開前にライセンスの取得を義務づけられていたものの、遵守する開発者はごくわずかだった。

しかし規制が文言通り実施されるようになり、2019年から2020年にかけて10万本近く削除されていたという。アップルは中国当局の要請によりアプリを削除したことが事実だと認めた上で、それは現地のルールに従うことだと説明。さらに「こうした要請を受けるたびに慎重に検討し、しばしば異議を唱え、反対している」とも付け加えていた。

習近平政権は文章や画像の自由な生成が政府批判に繋がると警戒し、言論統制をAIにも拡大しているとみられている。それは中国での生成系AI進化を遅らせる恐れもあるはずだが、自由主義諸国とは優先順位が異なるようだ。

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