米株式市場は大歓迎
「アップルカー」開発中止の報道。生成AIに集中するためか
アップルが長らく自社ブランドのEV、通称「アップルカー」開発に取り組んできたことは、ほぼ公然の秘密である。が、このほど同社がプロジェクトを正式に中止したとBloombergが報じている。自動運転レベルを引き下げた上で、早ければ2028年に発売予定との報道から約1か月後のことだ。
アップルは公式にEV開発を認めたことはなく、今回も声明は出していない。この決定は、ジェフ・ウィリアムズCOO(最高執行責任者)とプロジェクト担当したケビン・リンチ副社長が社内で発表したという。「最高幹部らがここ数週間で最終決定した」とされ、上述の報道後に急きょ風向きが変わったようだ。
アップルカー開発部隊、通称「Project Titan」チームには2000人以上が従事。プロジェクト終了に伴い、多くのスタッフはジョン・ジャナンドレア氏が率いるAIチームに移るという。今や同社にとって重要な優先事項となった生成AIプロジェクトに集中するとのことだ。
が、アップルカー開発に従事した全員が対象となるわけではない。数百人ものハードウェア・エンジニアや車両デザイナーは社内の他部署に応募できるかもしれないが、「レイオフはあるだろう」とBloombergは報じている。何人が解雇されるかは不明だ。
アップルは2014年以来、EV開発に取り組んできたと見られている。このプロジェクトは数年のうちに紆余曲折を経ており、ついに「野心的な自動運転車の計画」を縮小したとの報道もあった。元々はハンドルもペダルもない自動運転EVを目指していたものの、技術的な困難を前に妥協を余儀なくされ、「高速道路で使える誘導運転機能」までに後退していたという。
急転直下のプロジェクト中止は、ここ数ヶ月のEV市場の冷え込みが背景にあったようだ。高価格と充電インフラ不足により販売台数の伸びは勢いを失い、ゼネラルモーターズやフォードといった大手メーカーもハイブリッド車の生産に軸足を移している。
このニュースをBloombergが報じた直後、アップルの株価は上昇している。日の目を見ないかもしれないプロジェクトに年間数億ドルを費やすことを止めて、長期的な収益が見込める生成AIに集中することが歓迎されたようだ。
テスラCEOのイーロン・マスク氏も、今回のニュースに対して敬礼の絵文字をXに投稿している。アップルとテスラとは、互いにEV関連の人材を引き抜き合った間柄だ。またマスク氏も2019年に「2年以内にハンドルのない車を発売」との約束を未だに実現できておらず、様々な感慨があったのだろう。