当初目標はハンドルもペダルもない完全自動運転

“アップルカー”、2028年発売の可能性。自動運転レベルは引き下げか

Image:DenPhotos/Shutterstock.com

アップルが自社ブランドの完全自動運転EV(電気自動車)、通称「アップルカー」開発に長年にわたり取り組んでいることは、数々の情報や噂話から確実視されている。元従業員が自動運転に関する企業秘密を盗み出し、裁判で有罪を認めたこともあった

その最新情報として、同社が市場への投入を優先して「それほど野心的ではないデザイン」に方向転換して、早ければ2028年発売予定だと米Bloombergが報じている。

アップル社内に有力な情報源を持つMark Gurman記者によれば、以前は「真のドライバーレスカー」つまり運転の完全自動化を目指していたが、2022年末には高速道路などに限定した自律走行へと方向転換して、発売時期を2026年までに再設定したとのこと。

それさえも完成できないと判断したため、当面はテスラ車に近い運転支援機能に重点を置き、レベル2+のシステムを採用する予定だという。目標を引き下げつつ、発売目標が2年ずらされた格好である。

ちなみに自動運転には、米国自動車技術者協会(SAE)がレベルを設定している。常にシステムが全ての運転を行う完全自動運転はレベル5、特定条件下における完全自動運転がレベル4。そしてレベル2はハンドルとアクセル・ブレーキ操作の両方を支援するが、主たる操作はドライバーが担当し、道路に注意を払わなければならない。

今回の方向転換は、アップルカーにとって「極めて重要な瞬間」だという。目標を引き下げたレベル2+でさえ発売できなければ、経営陣は「プロジェクトの存在を真剣に考え直す」かもしれないと伝えられている。

アップルカーは2014年に計画が開始されて以来、何度も方向転換したことが報じられてきた。一時は完成車としての開発を棚上げして、代わりに他社の車向けに自律走行システムを提供するとの噂もあった。だが、やはり自社ブランドの自動車を投入する計画を堅持しているようだ。

この新たなアプローチにつき、アップルはヨーロッパの製造パートナー候補と会合を開いているという。初のアップルカーを投入後、いつかはレベル4(特定の条件下で、すべての運転操作を自動化)の自律走行システムを提供したいと考えているとのことだ。

当初アップルは「ハンドルもペダルもない」完全なドライバーレスカーを構想していたと報じられていた。またクルマ用に「社内で開発した最も先進的なコンポーネント」となる独自チップ設計もほぼ完成したと言われていたが、さしものハイテク企業も自動車という未知の領域ではままならないようだ。

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