解決には1977年当時の設計資料を読み解く作業が必要

ボイジャー1号、観測データを地球に送信できない不具合発生。即時の解決策なし

Image:Caltech/NASA-JPL

12月12日、NASAは星間空間を探査中のボイジャー1号に、重大な問題が発生したことを明らかにした。ボイジャー1号には3つのコンピューターシステムが搭載されているが、そのうちのひとつであるフライトデータシステム(FDS)が、この探査機に搭載されるサブシステムのひとつ、テレメトリー変調ユニット(TMU)と適切に通信しなくなり、観測で得た科学データを正しく地球に送信できなくなっているという。

FDSは科学機器からのデータだけでなく、宇宙船が正常に動作しているかをチェックするエンジニアリングデータも収集する。そのため、TMUが正常に動作しなければ、NASAはボイジャー1号の状態を把握することもできない。

TMUは現在、動作がおかしくなったことを示すように同じパターンの(無意味な)データを繰り返し送信しているという。NASAの管制チームは、考えられる問題を絞り込んだ結果、FDSがその問題の発生源だと判断し、このサブシステムを再起動させた。しかし、再起動後もFDSは同じ繰り返しパターンを送信してきたため、NASAのエンジニアは新たな解決方法を検討中とのことだ。ただ、この作業には数週間が必要になる可能性がある。

われわれは、普段扱っているパーソナルコンピューターのプログラムの動作がおかしい場合などは、単純に別の操作を試したり、プログラムコードの一部を書き換えて試したりできる。しかし、地球から240億km離れた宇宙船が相手の場合は、結果が想定できないコマンドを試すようなうかつな対処はできない。なぜなら、コマンドを送信してその結果が帰ってくるまでに45時間もかかるからだ。もし、コマンドのせいで探査機が姿勢を乱し、アンテナがあらぬ方向を向いて、航行ルートも予想できないものになれば、二度と探査機からの電波を捕捉できなくなる可能性もある。

現状、唯一ともいえる明るい要素は、ボイジャーのチームがこの探査機の問題をこれまでに何度もトラブルシューティングし、乗り越えてきた経験があるということだ。チームは、地上から送信されたコマンドをボイジャー1号が受信し、実行するところまではできていると判断している。そのため、FDSの動作不具合を修復できれば、トラブルから復旧できる可能性があると考えている。

ボイジャーが送ってくる科学データは、すべてがわれわれにとって未知の宇宙空間に関するものであり、地球から遠ざかれば遠ざかるほどその貴重性は高まる。そのため、あと数年で50歳になろうかという探査機を、可能な限り生きながらえさせることが重要だ。

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