AACS以外のデータは正常

星間空間を行くボイジャー1号、姿勢制御システムのテレメトリーに異常値

Image:NASA/JPL-Caltech

1977年に打ち上げられ、木星や土星に接近観測した後、2017年には太陽圏を抜け出て星間飛行に入ったNASAの探査機ボイジャー1号は、現在も元気に地上に様々なデータを送り続けている。しかし最近、その送信データの中に異常値が入っていることがわかった

信号電波の強度が落ちたわけではなく、機器として不具合によるセーフモードに陥っているわけでもないが、唯一、姿勢制御システム(AACS)からのデータ読み出しが、正しい情報をデータに反映していないようなのだ。

なぜ正しい情報を送ってきていないとわかるのかといえば、ボイジャー1号が正しく地球にデータを送るには、高利得のアンテナをきちんと地球に向けていなければならないから。そして多くのデータはきちんと届いているのに、AACSのデータがそれとは異なる状況になっていることを示すデータを送ってきている。つまりこれは、事実を反映していない可能性が高い。なお、船内の故障防止システムは起動していない。

AACSと略称で表されると、高度な仕組みを備えた高性能機器のように見えてしまうが、いかんせん45年前に打ち上げられた代物なので、何が起こっても不思議ではない。NASAの管制チームは、送られてくる信号を細かに分析しながら、おかしなデータがAACSから直接発せられているのか、それともテレメトリーデータに乗って送信されるまでに関わる他のシステムが、異常値を挟み込んできているのかを調べる予定だとしている。

この問題の発生原因がわかるまでは、ボイジャー1号が科学データを送信し続けられる期間などに影響が及ぶかどうかも、チームにはわからないとのこと。

現在、ボイジャー1号は地球から約233億km離れている。その距離は、光速で移動しても約20時間半はかかる。要するにボイジャーとの双方向通信は、コマンドを送ってその返答が帰って来るまでにほぼ2日を要するわけだ。管制チームは、問題の把握と可能なら修復することを目指し、非常にゆっくりとした時間のなかで問題と戦っている。

NASAジェット推進研究所(NASA JPL)でボイジャー1号、2号プロジェクトを率いるスザンヌ・ドッド氏は、「星間空間という、これまでどの宇宙船も経験したことのない高放射線環境をボイジャーは飛行している。従って、エンジニアリングチームにとってこれは大きなチャレンジだ。しかし、AACSに起こっている問題を解決する方法があるのなら、チームはそれを見つけられるだろう」と述べている。

ドッド氏は、解決の可能性のひとつとして、探査機がもつ冗長ハードウェアシステムのひとつが役立つかもしれないとしている。しかしその手が上手く使えないようなら、今後のボイジャー1号の観測はいまの状況のまま続けることになり、データ分析者のほうがデータに「適応」する必要が出てくる。

ボイジャーのチームが、バックアップシステムを使うのはこれが初めてではない。2017年には、ボイジャー1号のメインスラスターに劣化の兆しが現れ始めたため、管制チームは惑星接近探査のために使われていた別のスラスターを使うよう切り替えを行った。このスラスターは役目を終えてから37年、一度も使われていなかったが、テストをしたところきちんと動作した。

ボイジャー1号と2号は現在、星間空間を航行しながら、そのデータを送り返してくる唯一(唯二?)の探査機だ。ちなみにボイジャー2号は現在、地球から約195億kmの位置を飛んでいるが、動作はすべて正常とのことだ。

いずれにせよ、NASAは今後数年でボイジャー1号および2号のエネルギー源、プルトニウム238が崩壊しきって電力を失うと考えており、そうなればこれらの観測機はわれわれとの連絡を絶つことになる。予想では、プルトニウムはいずれも2025年までに使い果たされると見積もられている。

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