衛星通信のコストを背負うのはアップルだけ

iPhoneの衛星緊急SOS、捜索救助隊が「完全なゲームチェンジャー」と絶賛

Image:Apple

アップルが衛星経由の緊急SOS機能をiPhone 14シリーズに搭載してから、すでに1年以上が経過した。携帯の電波やWi-Fiの圏外でも助けが呼べることで、マウイ島の山火事をはじめ多くの命が救われてきたことは既報の通りだ。

この機能が米カリフォルニア州ロサンゼルス郡での捜索救助活動に、どれほどの影響を与えてきたかをライフスタイル誌Backpackerが伝えている。

まず、保安官事務所の所長補佐は、この機能のおかげで「十数件」も救助できたと語っている。そこでは複数のメリットが挙げられており、1つは「即座に通知が届く」ということ。これにより、被災者らは1時間以内に高度な救命処置を受け、生存率を高められると説明。さらに、いくつかの事故では100%の命が救われたという。

第2に、緊急通報サービス担当者と被災者間での双方向コミュニケーションについても賞賛。「911(緊急通報番号)のテキストメッセージを送ると、次のようなとても重要な情報を知ることができる。誰かケガしているのか? 何人と一緒にいるのか? 持病がある人はいるのか?」

緊急SOS機能は、まずiPhoneが緊急事態に関する質問を出し、ユーザーがそれに答える。そうして必要最小限の情報を緊急通報サービスに報せた後も、担当者とテキスト通信ができ、追加質問への回答やiPhoneのバッテリー残量まで満遍なく伝えられる仕組みだ。

その一方、捜索救助の技術ディレクターは、衛星経由の緊急SOS機能を「完全なゲーム・チェンジャー」と呼んでいる。特に、こうした状況でiPhoneが正確な位置情報を提供することは、人命救助に役立つという。

これまでの救助活動では、事故に遭った人が携帯電波を捕捉してから助けを求めるだけでも、1時間以上はかかったとのこと。警察に連絡が取れた後も、捜索救助チームに引き継ぐ必要があり、さらに時間がかかる。しかし、衛星を経由してスマートフォンで助けを呼び出せることで、中間を省くことができ、緊急時の対応時間が劇的に改善されると語っている。

また悪用や誤作動については、アップルと直接連携して微調整しているという。それでも「もしSOSコールを受けたら、我々はそれに全力で取り組むだろう」とのことだ。

iPhone 14シリーズを対象とした衛星緊急SOSサービスは、無料期間が1年延長された。かたや米クアルコムはAndroidスマートフォンに衛星通信機能をもたらす「Snapdragon Satellite」を発表したものの、11月にはイリジウムとの提携解消を発表。スマホメーカー各社に採用が広がらなかったと説明していたが、コスト高が敬遠されたようだ。

この方面ではしばらくiPhoneが独走しそうではあるが、いまだに衛星緊急SOSの提供地域は限られ、日本でいつリリースするのかも明らかになっていない。それを支えるハードウェアのコストもiPhoneの価格に含まれている以上、早期の提供を望みたいところだ。

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