オーナー自らによるヘイトスピーチ助長に広告主も戸惑い

マスク氏の反ユダヤ主義助長による「X」の大手広告主離れ、収入減をさらに加速か

Image:Omar ElDeraa/Shutterstock.com

元TwitterことXのオーナーであるイーロン・マスク氏が、反ユダヤ主義的な思想を助長する発言をしたことで、アップルやディズニー、IBMといった大企業が広告出稿を一時停止する事態となっている

Xの広告収入が前年比で約50%も落ち込んでいるのは、マスク氏も自ら認めていることだ。今回のさらなる広告取り下げにより、その減少幅はさらに大きくなる可能性があるとアナリストが指摘している。

調査会社Insider Intelligenceのアナリスト、ジャスミン・エンバーグ氏は、アップルなどの大手企業が広告を一時停止したことは、さらなる離脱を促す可能性があると指摘している。「大物広告主離れは他の広告主にも追随を促すだろうし、あまり声の大きくない広告主が引き揚げたロングテール(量的には小さいが長期的な動き)もすでにありそうだ」とのことだ。

大手ブランドは一般的に、ユーザー参加型プラットフォームに広告を掲載するリスクを承知しているという。特に政治的・社会的に緊迫したり戦争が起こった時期に、ブランドの信頼に関わる問題に対処するのは慣れているというわけだ。

だが、「プラットフォームのオーナーが誤った情報やヘイトスピーチを助長し、陰謀論者を増長させることには慣れていない」とのこと。

「マスク氏の言葉のインパクトは、社会的に大きな危険をもたらす。Twitterの影響力は常にユーザーベースや広告収益以上に大きい」「マスクとXは、いまだに世間の話題の主要な部分を占めている」とエンバーグ氏は述べている。

Insider Intelligenceは、Xの米国での広告収入は前年比で55%近く減少し、全世界では54.4%減少すると予測していた。これは今回の広告主離脱の前に算出されたものであり、いっそう加速しかねないというわけだ。

またエンバーグ氏は、Xの月間アクティブユーザー数は2023年の3億6370万人から4.1%減少し、2024年末には3億4860万人になると予測。そして米国では2022年の5890万人がピークで、2023年には5610万人、2024年には5160万人に減少する見通しとのことだ。

さらにエンバーグ氏は、マスク氏が自らブランドの安全性を貶めていることから、リンダ・ヤッカリーノCEOが広告主に保証しようとする努力は上手く行かないだろうと示唆している。

最近Forbes誌も、広告業界のトップがヤッカリーノ氏に辞任を迫っていると報道。なぜヤッカリーノ氏が自分の評判を危険に晒してまでマスク氏の行動を庇うのか疑問を投げかけ、退任することで人種差別や反ユダヤ主義について声明を出せるのではないかと連絡をしたという。

だが、ヤッカリーノ氏はその言葉に耳を貸さないようだ。「我々がXで行っていることは重要であり、誰もが注目している。私は自分たちのビジョンやチーム、コミュニティを深く信じている。これほど影響力が大きいと、反論者や捏造された気晴らしも出てくるが、我々の使命は揺るがない」とのこと。批判には歩み寄らず、あくまで敵対する構えである。

Insider Intelligenceは、今回の広告主の離脱を次回の予測に織り込むという。それがマスク氏やヤッカリーノ氏の意思や言動に影響を与えるのか、見守りたいところだ。

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