アップルも一応は抵抗

アップル、中国App Storeの規制強化。XやFacebook等の“抜け道”ふさぐ

Image:mundissima/Shutterstock.com

アップルは中国App Storeで新たなアプリを掲載するに当たり、中国政府のライセンスを証明する書類の提示を求めることを義務づけた。つまり現地の競合アプリストアと同じく、中国政府の規制強化に応じ、ほとんどの海外アプリを締め出す可能性がある。

先週The Wall Street Journalは、ここ数か月アップルが中国当局と話し合い、新たな規制の実施や、それが中国ユーザーに与える影響につき懸念を表明したと報道。その上で、同社が規制を回避する方法を探っていると報じていた

しかし、アップルは9月29日から現地の開発者向けサイトにて「インターネット・コンテンツ・プロバイダ(ICP)申請」の提出を求めるようになったと明らかにした。

ICP申請とは、中国でウェブサイトを合法的に運営するために必要な国家登録制度であり、2017年以降テンセントやHUAWEI等ほとんどの現地アプリストアは採用している。アップルは、6年遅れで現地の規制に従っただけとも言える。

中国のApp Storeでは、このICPポリシーが厳密に守られてこなかった。そのため、InstagramやFacebook、YouTubeやWhatsApp、X(Twitter)など欧米の人気アプリは中国のグレートファイヤーウォールに通信を遮断されながらも、現地App Storeで入手できた。

VPN(仮想プライベートネッワーク)を通じて、海外サーバーにログインできたわけだ。不正なVPNの利用も中国では禁止されているが、それでも完全な取締りはできていない

しかし、今年8月に中国は規制をさらに強化し、全てのモバイルアプリストアとアプリ開発者に対し、政府への事業詳細を含む「アプリ申請」の提出を義務づけると発表した。それを受けて、アップルもついにアプリ開発者にIPC申請を求めるに至ったという流れだ。

IPC申請ライセンスを取得するには、開発者は中国に現地法人を設立するか、現地のパブリッシャーと協力しなければならない。だが、ほとんどの海外アプリ開発者は中国政府へのアプリ申請をしないと予想される。もしも申請すれば、データ転送の制限や検閲に従わざるを得なくなるからだ。

アプリ申請を拒否したアプリ開発者は、2024年3月に猶予期間が終了した後、法的措置を下される可能性がある。またアップルも、現地App Storeで未登録アプリを配信し続けた場合は処罰を受ける恐れがあるため、事実上アプリを削除する他なくなる。

新型コロナ禍のもと、中国内で厳しいロックダウン政策が行われていた際、国内で使えないはずの旧TwitterやTelegramなどSNSアプリを通じて政府への抗議活動が繰り広げられてきた。中国政府としてはVPNを完全に塞ぎようがないため、アプリの入手自体を断つ狙いかもしれない。

いまや中国市場はアップルの売上高の約5分の1を占めており、現地から撤退することはあり得ない。そのため、現地での規制に抵抗しつつも、結局は従うことを繰り返してきた。数年前には10万本近くのゲームアプリを削除していたし、生成系AIアプリについては規制を先取りして大量削除する動きもあった

関連キーワード: