すでにサムスンは自社のGalaxy Sシリーズに採用
「iPhone 16」、MLA技術によりディスプレイ輝度を上げつつ省電力を実現か
次期「iPhone 15」シリーズは、9月13日深夜(日本時間)のスペシャルイベントで発表される見通しだ。そんななか、翌年の「iPhone 16」シリーズは有機EL画面の輝度を維持ないし向上しつつ、消費電力を減らせる「マイクロレンズアレイ(MLA)」技術の採用を検討していると報じられている。
韓国の電子業界誌The Elecによると、サムスンディスプレイとLGディスプレイは将来のiPhone向け有機ELパネルにMLAの採用を提案したという。が、この技術には長所と短所があり、アップルの最終決定はまだ出ていないそうだ。
MLAは、有機ELパネル内部に数十億個のレンズを均一なパターンで配置し、内部での反射を抑える技術だ。有機EL発光層からの光をレンズにより経路を変えることで、正面方向からの光の取り出し効率を高める仕組みだ。その結果、同じ消費電力レベルで輝度を上げるか、同じ輝度を維持しつつ省電力を実現できる。
しかし、正面輝度を高めると、視野角が狭くなるおそれもある。ユーザーの目に向かって直進性を高めることで、側面に送る光の量が少なくなってしまうためだ。そればかりか、製造コストも上がるという問題も抱えている。
もう1つ事態を複雑にしている要因は、サムスンとLGが使う材料セットが異なり、どちらもアップルの品質基準を満たしていないと言われていることだ。有機ELパネル製造において、材料セットはディスプレイの性能を左右する重要な要因であり、サムスンは改良を重ねていることが知られている。
有機ELパネルにMLA技術を採用したスマートフォンは、いくつか前例がある。サムスンも自社のGalaxy Note20 Ultra(2020年発売)を皮切りに、Galaxy Sシリーズの一部に搭載。また同社は、Vivoなど中国製スマホの5~6モデル向けに供給したこともある。
その一方、LGは大型スマートTVにMLA技術を導入しているが、一般的な中小パネルに採用した例はないとのことだ。
サムスンとLGはiPhone用パネルを供給しているほか、有機EL搭載iPad Proでもサプライヤーになると噂されている。たとえ両社に技術格差があったとしても、アップルとしてはLGも供給元に加えて、サムスン一社への依存を避けたいのかもしれない。
今年3月には、まさにアップルがサムスン依存を脱却するため、マイクロLED開発に巨額投資をしていると報じられていた。が、その取り組みは2017年のiPhone X以前からとされ、いまだに実を結んでいない。その第1段階となる「Apple Watch UltraへのマイクロLED採用」も2025年と予想されており、サムスン頼りはしばらく続きそうだ。