AIの表現力向上とそのための素材の権利などが絡み合う

米著作権庁、生成AIの著作権問題についてパブコメ募集

Image:KY726871 / Shutterstock

ここ最近急激に進歩したAIの、強化用トレーニングデータと生成AIツールの出力結果における著作権の取扱いは、政治家、アーティスト、著述家、映像制作者、さらには市民権団体に至るまで、様々な人たちに関連するトピックであり、紛争のもとにもなっている。

米国著作権庁は、判断が難しくなりつつある生成AIの出力にへの対処方法を模索する中で、AIと著作権の問題に関するパブリックコメントの募集を2023年8月30日から開始することにした。書面でのコメントは10月18日まで、オンラインでの回答期限は11月15日に設定されている。

官報には、AIモデルが著作権付きデータをトレーニングにどのように使用すべきか、人間が関与しない場合でもAIが生成した物質は著作権を有することができるか、そしてAIの著作権責任のあり方という、3つの質問に対するコメントを主に求めている。

募集項目には、AIが公衆の肖像権を侵害する可能性についての質問もあるが、これは厳密には著作権の範疇ではない。ただし、AIが声や肖像、芸術に関するスタイルなどを模倣する場合、公正競争法や公衆の肖像権に関連する州の法規定に関わってくる可能性があると、著作権庁は述べている。

AI生成物に関する問題で最も知られているものとして、AIによって生成されたアート画像に関し権利を主張したスティーブン・セーラー氏の要求を却下し、訴訟事例に発展した案件が挙げられる。ワシントンD.C.の連邦裁判所は、この訴訟で米著作権庁の判断と同じ立場をとり、人間が関与しない作品には著作権が付与されたことはないと述べ、AI生成物の著作権は、それを生成したAIや使用者にも認められないという判断に一応は落ち着いた。

しかし一方で、生成AIツールの心臓部である大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上にあるコンテンツをほぼ自由に収集したデータセットを取り込んでその強化に使用しており、著作権を含む素材が含まれているかどうかが明確でない場合が多い。そして、すでにいくつかのAI強化データセットに対して、著作権侵害を主張する訴訟も起こされている。

たとえばコメディアンのサラ・シルバーマン、作家のクリストファー・ゴールデンやリチャード・カドリーは、自分たちの本がOpenAIとMetaによってChatGPTとLLaMAを改善するのに使用されたとして、それぞれ独自に法的手続きを開始している。また、生成AIプラットフォームのStable DiffusionとMidjourney、そしてアート共有ウェブサイトDeviantArtに対しても、3人のアーティストが、同意なく自身のアートをAI強化に使用されたと訴え出ている。

報道機関のなかには、自社のコンテンツを無断でAIのトレーニングデータセットに取り込まれないよう、OpenAIなどのクローラー(自動データ収集プログラム)によるスクレイピングを排除する動きを見せている。

米国では政治家らもAIに関する規制について最良の方法を検討する議論が始まっており、合衆国上院院内総務のチャック・シューマー議員は、AI技術に関する規則案の作成を急ぐよう呼びかけている。

これらはすべて米国内を対象とした話だが、日本国内でも生成AIに関する議論は行われている。日本政府は8月4日に「AI戦略会議」を開き、人権侵害の防止や、法的拘束力の範囲、多様性の尊重など、AIの出力に関して遵守すべき基本的責務をまとめている。またAIの開発から提供・利用の各段階で、企業に求められる役割も盛り込み、OpenAIやGoogleなど一定以上の規模を持つ企業を対象として、それぞれのAIの仕組みや機能、リスク・リスク管理体制に関する情報の開示を求めるなどとしている。

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