一部従業員にも「Zoom疲れ」

リモートワークの代名詞Zoom、従業員に週2出社を求める

Image:Girts Ragelis/Shutterstock.com

ビデオ会議サービスのZoomは、数年にわたる新型コロナ禍のもと、世界中の人々が在宅勤務や遠隔での共同作業を続けることを支えてきた。いわばリモートワークの代名詞とも言える企業が、会社のオフィスから50マイル(約60km)以内で働くスタッフに対して、週に2日出勤するよう伝えたという。

同社のグローバルPR責任者コリーン・ロドリゲス氏は「我々は構造化されたハイブリッドアプローチ、つまりオフィスの近くに住んでいる社員がチームと交流するため週に2日は現場に行くことが、Zoomにとって最も効率的だと信じている」と述べたとのこと。

さらに「今後もZoomプラットフォーム全体を活用し、社員と分散したチームが常につながり、効率的に仕事ができるようにしていく」とも付け加えたという。The New York Times(以下、NYT)によると、新たなハイブリッドワーク体制は8月から9月にかけて順次行われるそうだ。

新型コロナ禍が始まった2020年、Zoom会議の参加者は、前年の1000万人/日から3億人以上/日へと急増し、その年に最もダウンロードされたiPhone無料アプリとなっていた。しかし、コロナ禍が収束するにつれ(少なくとも社会がウィズコロナの選択をした後)、Zoomの急成長も終わりを告げた。

今年2月には従業員の15%にあたる約1300人を解雇し、エリック・ユアンCEOも自らの給与を98%カット。Reutersは、2022年にZoomの利益は38%減少し、売上が6.7%しか増えなかったことを受けてのことだと報じていた

それでもZoomは、いち早くハイブリッド体制に移行した他社よりは踏み止まった。たとえばGoogleは2022年4月から、米国の多くの拠点で週3日のオフィス勤務を義務づけている

またアップルも昨年9月から少なくとも週3日の出勤を求め、今年3月には締め付けを強化しているとの報道もあった。そしてイーロン・マスク氏はTwitter(現X)を買収した直後、リモートワークを基本的に禁止。これらの企業では、オフィス復帰に反対する動きも珍しくはない。

しかし、ハイブリッドワークの専門家であるニック・ブルーム氏は、オフィス復帰の流れにつき、企業が不動産に費やしている金額を考えれば驚くことではないとNYTに述べている。

物理的なオフィスの費用を支払った上で、現地の従業員を雇用しているのだから、完全なリモートワークで得られるものは何もない、というわけだ。むしろ、Zoomがこの方針変更を正式発表するまでに時間がかかったことが「一番の驚き」だと語っている。

それでもZoomであれ、一部の従業員が完全リモートワークのデメリットとして、孤立感を感じているとの指摘は興味深い。Zoom社内であれ「Zoom疲れ」はあったようだ。

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