iPhone販売不振への不安を打ち消すため?

アップルが「生成系AI」開発中、ティム・クックCEOが明かす。慎重姿勢から一転

Image:Adrian Tusar/Shutterstock.com

アップルは現地時間8月3日に第3四半期(4~6月)の決算を発表し、売上高と利益ともに市場予想を上回った。稼ぎ頭のiPhoneは売上高が減少したものの、Apple TV+などサービス部門の売上が好調だったこと、中国での売上が前年比8%増だったことが補った格好だ。

それに伴い、同社のティム・クックCEOは米Reutersの取材にて、生成系AI技術への投資をアピールしている。

アップルの研究開発費は今年度累計で226億1000万ドルにも上り、前年度の同時点よりも約31億2000万ドル増加した。クック氏は、それが他社が研究開発費を注ぎ込んでいるのと同じ分野である、生成系AI研究が一因だと語っている。

「我々は何年も前から、生成系AIを含む幅広いAI技術の研究を行ってきた。人々の生活を豊かにするために、これらの技術に投資して革新し、責任を持って製品を進化させ続けるつもりだ」とのこと。さらに「わが社は多額の投資を行っており、それはご覧になっている研究開発費に表れている」として注力を強調している。

これは、今まで生成系AIへの言及を避けつつ、より広い意味での人工知能や機械学習技術のみコメントしてきたクック氏としては注目すべき変化である。今年5月、クック氏は生成系AIにつき「非常に興味深い」と言いつつも「整理しなければならない問題が数多くある」とも付け加えていた。

また他のアップル幹部らも、公の場では慎重な姿勢を取っていた。いよいよ会社として生成系AIへの取り組みを語るとも予想された6月のWWDC基調講演でも、一度も「AI」という言葉が使われなかったほどである。

それが一転して、クック氏自らが生成系AIへのコミットをアピール。さらに米CNBCの取材に応じたクック氏は「我々はAIとML(機械学習)を基本的なコア技術だと捉えている。それらは事実上、我々が作る全ての製品に組み込まれている」「研究ベースでは、生成系AIを含むAIと機械学習の研究を何年も行ってきた」という具合だ。

先日Bloombergは、アップルが社内で独自の生成系AI「AppleGPT」を開発中だと報じていた。「特別な承認が必要」や「いかなる出力も顧客向けの機能開発に使ってはならない」など制約が厳しいが、それでも従業員は製品のプロトタイプ作成の補助などに活用しているという。

アップルは2024年中に「AI関連の重要な発表を行うことを目指している」とも報じられていたが、まだ詳細は不明である。

生成系AIは紛らわしいウソをつくことや、顧客データが漏えいする等のトラブルが絶えず、何より信頼性とプライバシーを重視するアップルがことを急ぐとは考えにくい。また同社は不安材料があれば発売延期、時として中止も辞さないため(ワイヤレス充電パッドAirPowerなど)今後の推移を見守りたいところだ。

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