部品単位でスキャンして自作

世界初のUSB-C版iPhoneを作った男、AirPods Proケースを「修理可能」に改造

Image:Exploring the Simulation/YouTube

かつて世界初のUSB-C版搭載iPhoneを自作したKen Pillonel氏は、その後もUSB-C版AirPods充電ケースを作るなど、今後のアップル製品がUSB-Cに移行する動きに先んじていた。

その希有な改造家が、今度はAirPods充電ケースを「修理可能」、つまりバッテリー等の部品を交換しやすいよう改造した道のりを公開している。

AirPod充電ケースは組立てに強力な接着剤を大量に使っているため、壊さずに部品を交換することがほとんど不可能だ。ハイテク製品の分解で知られる修理業者iFixitによる修理しやすさスコアは、10点満点中0点である

これを受けてPillonel氏は「現在、最も人気のあるガジェットの1つであるAirPods Proが、最小限の労力で簡単に修理可能なものにできたことを実証するため」プロジェクトに挑んだとのこと。その目標は、消費者や大企業にハイテク製品を使い捨ての商品としてではなく、自分でいじり、そこから学び、適切なスキルがあれば自ら修理できるものとして扱うよう促すことだという。

今回の試みは「改造」どころではなく、充電ケースの再設計にまで及んでいる。接着剤の代わりにねじやナットを使って修理しやすい作りにするには、一部のパーツをそれに耐えうるものに置き換えないといけないからだ。

そのためにはケース全体を分解して、すべての部品を正確にスキャンする必要があった。しかし、単純なノギスや2Dスキャン装置では、複雑なカーブを描く一部の部品は上手く捉えられない。一般ユーザーの意識向上を促すためか、Pillonel氏は手頃な価格の3Dスキャナーについても詳しく説明している。

改造ケースに含まれる接着剤の量は、オリジナルの製品と比べれば減っているが、いくつかの磁石を固定するため少し使われている。それでも、アップルの剥がれにくい緑色の接着剤ではなく、アセトンに浸せば簡単に剥がせるシアノアクリレート接着剤によるもので、取り外しやすくはなっている。

今回の試みはあくまで充電ケースに焦点を絞っており、イヤホン本体を修理可能にする準備はまだできていないという。「イヤホン自体が小さいので、手元にあるツールでデザインを再現するのはかなり難しい」とのことだ。しかし、将来的には可能になる日が来るかもしれないとして、同じような設計原理を適用できると考えている、と語っている。

また、この改造方法は初代AirPods Pro用充電ケースに限られる。第2世代Pro用の充電ケースは、壊さずに修理可能とすることはまだ出来ないそうだ。

以前のプロジェクトと同様、Pillonel氏は自ら充電ケースを改造したい人のために回路図を公開している。ファイルへのアクセス方法は動画の最後に書かれているが、無料で入手したい場合はProtonMailアカウントを作成する必要がある。

これらの改造を自力でやるには、技術力はもちろんのこと、様々な工作機械や入手が易しくはない部品類が必要となる。それを省いて改造パーツや改造済みケースを使いたい人向けにストアを開設済みだが、たとえばUSB-C版AirPods Pro用ケースは289 スイス・フラン(約4万7000円)。なぜこんなに高いのか?といった質問へのFAQも用意されている。

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