長時間の空の旅のお供にはピッタリ?

Apple Vision Proに“飛行機用モード”搭載か。ベータ版に手がかり

Image:Apple

アップルは空間コンピュータ(AR/VRヘッドセット)Vision Proのアプリを開発できるvisionOS SDKをデベロッパー向けに配信開始した。Xcode 15ベータ版2に含まれる形だが、これによりvisionOSシミュレータが利用可能となり、Vision Proを仮想的に試せるようになった。

この開発者向けベータ版から、アップルが公表していない隠し機能「トラベルモード(Travel Mode)」が発見された。同社がVision Proの全機能を明かしていない、ないし発表段階に至らない開発中の要素があることは、先日The Informationも報じていた

米MacRumorsをベータ版を深掘りしたところ、特に飛行機内でのユーザー体験を向上させる目的のトラベルモードが見つかったという。密閉された空間、かつ身動きの取りにくい機内環境は、VRデバイスに不向きなことを考えると、アップルが独自のモードを用意したのも頷ける。

この開発者向けベータから見つかった、主なプロンプト(確認を求めるメッセージ)に関する文字列は次の通りだ。

  • 飛行機に搭乗中ですか?
  • 飛行機に登場している場合、Apple Vision Proを使い続けるにはトラベルモードをオンにしておく必要があります
  • トラベルモードで静止したままにしてください
  • このモードがオフになる間、静止した状態を続けてください
  • 一部の認識機能がオフになります
  • 現在のフィットは視線の精度を低下させる可能性があります
  • Apple Vision Proを使い続けるには、飛行機の中でトラベルモードをオンにしてください
  • トラベルモードがオンの間、あなたのrepresantation(訳注:おそらくユーザー自身を表現するPersona)は使用できません

これらプロンプトから、トラベルモードはVision Proを飛行機内の特殊条件に適応させるよう設計されていることが分かる。以下、推測される機能や制約のあらましだ。

一部センサーの無効化

「一部の認識機能がオフになります」とは、空間認識に関する特定のセンサーや機能がオフになるか限定される可能性があると示唆している。

機内では他の乗客との距離が近く、スペースが限られているため、これらセンサー類の動作が不安定ないし不正確になり得る。それを無効化や制限することで、VR体験を不快にしたり中断したりすることを防ぐ狙いがあるようだ。

「Persona」機能の使用不可

「あなたのrepresantationは使用できません」という表現は、Vision Proを装着しているユーザー自身を表すPersona(一般的にはアバター)を使えない可能性を示唆している。

具体的な理由は不明だが、制約のある空間や無効化された認識機能がアバターの精度や表現に影響するのかもしれない。

視線精度の低下

「現在のフィットは視線の精度を低下させる可能性があります」とは、機内で座っている姿勢のため、視線トラッキングに影響を与えるということだろう。しかし、トラベルモードはそれを認識し、それを補正する調整を行う可能性があるようだ。

機内では「静止したまま」

これはユーザーが飛行機に搭乗中に不用意に動き回ったり、大きなジェスチャーをしないようにする安全対策かもしれない。

先日のWWDC基調講演でのイメージ動画を見るかぎり、Vision Proは屋外を歩き回るような用途は、想定ないし推奨されていないと思われる。

だが、広い意味で「屋内」の範ちゅうにある飛行機内での使用は考慮されており、ユーザーにできる限り快適な体験を保証するアップルの細部へのこだわりを示しているようだ。実際、「長時間にわたってヘッドセットを装着し続ける」状況と言えば飛行機内が最もあり得やすいとも思われる。

まだトラベルモードはベータ版のため、Vision Proが発売される前に、さらなる改良が加えられ、多くの機能が追加される可能性がある。近い将来、飛行機のビジネスクラスにはVision Proをかけて仕事をしたり、動画やゲームを楽しむ乗客がズラリと並ぶ風景が出現するのかもしれない。

関連キーワード: