許容値以上の数値変動があったとのこと

ispace、月着陸失敗は「ソフトウェアのエラー回避処理」が原因と判明

Image:ispace

4月下旬の「HAKUTO-R」ミッション1において、民間初の月面着陸に挑んだものの、望んでいた結果には至らなかった日本の宇宙ベンチャーispaceが、その後の原因調査の結果を発表した。同社によると、着陸機(ランダー)は着陸シーケンスによって月面にアプローチした際、その高度を5kmも読み誤っていたのだという。

4月26日午前0時、ランダーは月面からの高度100kmの上空から、ゆっくりと高度を下げて地表を目指した。しかし、高度5kmまで降下したところで、ランダーは自身の高度をゼロと判定していたとのことだ。ランダーはその後、いつ着地するかわからない状態で推進剤を噴射しつつ微速で降下したが、当然ながらまだ5kmもある状況のなかで推進剤を使い果たし、結果的に自由落下してしまったと考えられる。

では、なぜ5kmも高度を読み違えたのか。ispaceの分析によると、ランダーは着陸地点上空に至るまでに、月面にあるクレーターの縁の上を通過していた。クレーター内は窪地になっているため、クレーター上空をその縁から内側に向けて通過すると、ランダーのセンサーは、(実際は地面のほうが低くなっているのだが)高度が急激に高くなったような数値変化を記録する。

ランダーのソフトウェアは、この急激な数値変化を受け取ったときに、これをセンサーの故障やなにかによるエラー値だと判定してしまった。そして、エラーが起きた場合でも安定運用を維持するために組み込まれたフィルター機能が数値変化を「なかったこと」にしてしまった結果、誤った計測高度で着陸シーケンスを遂行して推進剤が枯渇してしまった模様だ。

もし、ispaceのソフトウェアチームが崖による高度変化を5km以上まで想定できていれば、今回の着陸は成功していたかもしれない。ispaceは2024年にミッション2、2025年にミッション3を行うことを計画しているが、この打ち上げ時期に変更はなく、ソフトウェアの改修や想定シミュレーションの範囲を拡大してミッションの精度を向上させていくと述べている。

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