ミッション2、3に期待

民間初の月着陸に挑んだispace、着陸時に通信途絶。袴田代表「我々は歩み続ける」

Image:ispace(YouTube)

日本発の宇宙ベンチャーispaceは、予定どおり2023年4月26日1時40分より「HAKUTO-R」ミッション1ランダーによる民間初の月面着陸に臨んだものの、1時45分にランダーとの通信が途絶状態になった。

ライブ配信の映像からは、着陸直前に高度10mのあたりまではテレメトリーのアップデート表示が入っていたものの、その後、情報が入ってこなくなった。また降下速度は30km/h前後まで減速していたように見える。ただ、映像表示と実際の通信のタイミングがどこまで正確に合致していたかはわからない。いずれにせよ管制室に、ランダーから着陸完了の信号は送られてこなかった。

ispace CEOの袴田武史氏は「ランダーの月面への着陸を確認できていない。着陸直前まで通信はできていたが、その後通信が確立できない状況になった」と述べ、エンジニアによる調査を継続し、状況をアップデートするとコメントした。

その一方で袴田CEOは「すでにミッション1は大きな成果を残した。着陸までのフライトデータは得られているので、次の使命であるミッション2、3にナレッジをフィードバックして技術成熟度を上げていく」とした。

この着陸は、2013年から民間による月面着陸コンペとして始まったGoogle Lunar X Prizeへの挑戦を含め、10年を超える活動の総決算とも言うべきチャレンジだった。Google Lunar X Prizeが2018年に勝者のないまま終了したあとも、ispaceは諦めずに挑戦を続けてきた。そして2022年12月、「HAKUTO-R」ミッション1はSpaceXのFalcon 9に搭載されて離陸し、舞台は宇宙空間へ。さらに3月22日には月周回軌道に到達した。

着陸シーケンスは高度100kmから開始され、数十分ほどの時間をかけて月の地面に近づいていった。そして今にも着陸かという頃、不意にランダーとの連絡がとれなくなってしまった。

ランダーにはNiterra(旧社名:日本特殊陶業)が開発した全固体電池が搭載されて、その宇宙空間における性能試験も予定されていた。またJAXAとタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学などが共同開発した変形型月面ロボ「SORA-Q」と、アラブ首長国連邦(UAE)の月面ローバー「Rashid(ラシード)」が、着陸後に月面を探査する予定だった。

ispaceは2月の段階で、それまでミッション1ランダーから得た成果をミッション2に投入しており、今後も計画に変更なくミッション2、3を進めていくとしている。

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