バッテリー持ちが気になるところ
AMD、携帯ゲーミングPC向け「Ryzen Z1」発表。上位モデルはPS5に迫る性能
米AMDは現地時間4月25日、携帯ゲーミングPC向け4nmプロセッサー「Ryzen Z1」および「Ryzen Z1 Extreme」を正式に発表した。当初はASUSの「ROG Ally」に独占的に搭載される見通しだ。
Ryzen Z1 Extremeは、Zen 4 CPU 8コア/16スレッド、RDNA 3 GPU 12コア/24MBのキャッシュを搭載し、最大8.6TFLOPS(処理速度の目安となる単位)のグラフィック性能が標榜されている。これはSteam Deckの最大1.6TFLOPSを超えており、PS5の10.28TFLOPSに迫るものである。
かたや下位モデルのRyzen Z1は、CPU 6コア/12スレッド、GPU 4コア/22MBのキャッシュを搭載し、最大2.8TFLOPSに留まっている。それでもSteam Deckより、理論値では55%も上回ることになる。
では、実際のゲームの動作はどうなのか。たとえばZ1 Extremeの場合、720pをRSR(AMDの超解像技術)で1080pにアップスケールした場合、『Red Dead Redemption 2』のような負荷の高いゲームでも60fpsでも快適に動くと主張されている。
その一方Z1では、最も処理が重めのゲームでは厳しい印象もあるが、平均的な数値は悪くなさそうだ。
これらベンチマークは試作機のものではなく、ROG Allyの「高度なエンジニアリングサンプル」上で実行されているという。ネイティブ1080pで動作させた場合、やはり『Red Dead Redemption 2』や『Far Cry6』などはストレスを感じそうではあるが、AMD側は要求スペックが高いゲームは30fpsまたは40fpsにロックできるだろうと述べている。
しかし、この数値を額面通りに受け止めるわけにもいかないだろう。なぜなら、すべてがRog Allyの「ターボモード」により実行されており、ゲームによっては最大消費電力が30Wにも達している可能性があるからだ。
それに対してSteam Deckは通常4~15Wで動作し、高くとも29W程度である。それでもバッテリーは約2時間しか持たず、外で遊ぶモバイルゲーム機としては使いにくいとの声も少なくない。
もしもROG Allyに大容量のバッテリーが積まれるか、同じく15Wで快適に動作するのならば問題ではないだろう。一応AMDは、Z1/Z1 Extremeともにフレームレートの目標値に基づいて自動的に電力を節約できる「Radeon Chill」機能に対応していると述べているが、実機でバッテリー持続時間を検証した報告が待たれるところだ。
このZ1とZ1 ExtremeはしばらくASUSの独占販売となるが、将来的には両チップないしZ系のプロセッサーが他の企業にも提供されるかもしれないとのこと。まだ「Steam Deck」キラーになるかどうかは未知数だが、少なくとも有力な対抗馬は増えそうではある。
ASUSは現地時間5月11日に、Rog Allyを特別ローンチイベントと同時に発売すると発表している。また同社はPCGamerに対して「1,000ドル以下になる」とも語っており、高価になりつつある携帯ゲーミングPC業界に波乱を起こすことになりそうだ。