アップルのロビー活動は奏功せず

Apple Watchの特許侵害裁定、バイデン政権が支持。米国で輸入禁止の可能性が高まる

Image:DenPhotos/Shutterstock.com

Apple WatchのECG(心電図)アプリが特許侵害という米国際貿易委員会(ITC)の裁定により、本製品が米国で輸入禁止になる可能性が生じたことは、先日もお伝えしたばかりだ。この裁定が米バイデン大統領により支持され、いっそう輸入禁止が現実味を帯びてきた。

この特許訴訟の発端は、2015年にまでさかのぼる。米医療機器メーカーAliveCorの主張によれば、同社はウェアラブルECGセンサーの情報をアップルと共有し、Apple Watch用リストバンドにつき提携の可能性を協議したという。

が、結局は具体的な商談には発展せず、AliveCorはApple Watch用アクセサリー「KardiaMobile」を発売。しかし2018年、アップルはECGアプリを搭載するApple Watch Series 4を発表し、AliveCor製品は販売終了を余儀なくされた。

そして2021年、AliveCorはアップルが同社のECG技術を盗み、3つの特許を侵害しているとしてITCに提訴。ITCは昨年12月22日にその主張を認め、Apple Watchを輸入禁止にすべしとの判断を下した。

が、アップルには逆転のチャンスがあった。ITCの裁定を、バイデン大統領が覆すことだ。

ITCの規則に基づき、本件のゆくえはバイデン大統領に引き継がれた。同政権には60日間の猶予が与えられ、裁定が必要なすべてのガイドラインに沿っていると確認する最終審査が行われることになった。この決定が21日(米現地時間)正式に下され、AliveCorは大統領審査をクリアしたことを発表。バイデン政権は、結局のところ拒否権を行使しなかったのである。

AliveCor社のプリヤ・アバニCEOは、本日の声明で勝利をアピールしている。「バイデン大統領がITCの裁定を支持し、アップルが我々の業界をリードする心電図技術を支える特許を侵害した責任を追及したことを称賛する。この裁定は、AliveCor社にとどまらず、消費者に利益をもたらす新技術を構築し、拡大するために米国が特許を保護するという明確なメッセージを革新者に送るものだ」とのこと。

一般的には、米大統領がITC裁定を覆すことは稀ではある。が、2013年には当時のオバマ大統領がアップルとサムスンの特許訴訟につき、iPhoneとiPadの輸入禁止に拒否権を発動していた前例もあり、今回もそれに倣うとの見方が有力だった。

しかし、一方では米特許省庁のPTAB(特許審判委員会)がAliveCorの3つの特許を無効と判断している。AliveCorはそれを不服として控訴しており、ITCが実際にApple Watchを輸入禁止にするかどうかは、連邦裁判所での審判の結果しだいである。

もしもAliveCorが控訴審に勝利した場合、ECGアプリを搭載したApple Watchに対する「制限付き排除命令」が全面的に発効し、輸入禁止は現実のものとなる。そうなれば米国に輸入・販売できる現行モデルはECG非搭載のApple Watch SE(第2世代)のみとなるが、今後の展開を見守りたいところだ。

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