アップルは大規模なロビー活動を展開中

Apple Watchが米国で輸入禁止になる可能性。特許侵害の申し立てにより

Image:Fabio Mota/Shutterstock.com

Apple Watchの心電図アプリが特許侵害との米国際貿易委員会(ITC)の裁定を受けて、本製品が米国で輸入禁止になる可能性があると報じられている。そのためアップルはバイデン政権に対して、ロビー活動を強化しているとのことだ。

これはITCが12月22日(現地時間)、アップルが米医療機器メーカーAliveCorの特許を侵害しており、輸入禁止にすべきだとしたことが発端だ。もっとも米特許省庁のPTAB(特許審判委員会)がAliveCoreの特許を無効と判断したため、これに対する異議申し立てが解決するまでは輸入禁止が保留されている。

米カリフォルニア州のスタートアップAliveCorの主張によれば、2015年にウェアラブルECG(心電図)センサーの情報を初めてアップルと共有。同社と良好な関係が築けたと考えてApple Watch用アドオンアクセサリー「KardiaMobile」を発売したものの、Apple Watch Series 4にECGアプリが搭載されたことで販売終了を余儀なくされたという。

そしてAliveCorはApple Watchの心電図アプリが自社の特許を侵害しているとして、ITCに提訴。昨年6月に判事がAliveCorの訴えを支持し、12月には上記の裁定が下っていた。

アップルはApple Watchユーザーから、自分の命を救ってくれたという500通以上のメールを受け取ったとのこと。そしてITCに準備書面を提出する際、輸入禁止が公共の利益を損なう証明として、これらのメールを添付している。

そしてバイデン政権は、輸入禁止が公共の利益に反するとしてITCの裁定に拒否権を行使するか、それとも支持して法廷で進めさせるかの選択を迫られている。そのためにアップルは、オバマ政権時代にITCの議長を務めたロビイストのシャラ・アラノフ氏と契約したとのことだ。

2013年にも、アップルは同様の事態に直面したことがある。ITCにサムスンの特許を侵害していると認定されたためだが、当時のオバマ大統領はiPhoneとiPadの輸入禁止に拒否権を発動している。それは現職の米大統領として、実に26年ぶりのこと。その理由は「米国経済の競争条件や米国消費者への影響」を考慮したため、とされていた。

昨年10月、米下院民主党議員らはITCに対してApple WatchのECG人気を指摘し、輸入禁止は「企業や何百万人もの米国人に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある」と警告していた。アップルは2022年内にロビー活動に9400万ドル近くを費やしたとの調査結果もあるが、今回もやはり米国経済や消費者への影響を勘案したとして、同じ対応が取られるのかもしれない。

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