胃腸内の環境を変えていく

深刻な「牛のゲップで温暖化」にカンガルーの糞が効くという研究結果

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メタンガスには、CO2の約30倍もの温暖化効果があるとされ、世界中で飼育されている牛が放出するゲップ(または”おなら”)からのメタンガスが、割合的にCO2ほどではないものの、実は気候変動に影響していると言われている。

臭いものには蓋をするのが一番だが、牛にゲップをするなと言ってもなかなか聞いてくれるものではない。そこで近年、研究者たちは牛のゲップに含まれるメタンを減らすため、飼料に海藻、熱帯植物の葉、魚油などを加え、添加物によるメタン抑制効果を測ってきた。いずれの研究も程度の差こそあれ、それなりの効果が確認されている。

一方で化学的なアプローチとして、腸内の細菌を抑制する薬やワクチンを開発する研究も行われているが、メタンを発生するバクテリアが薬品耐性を持つようになり、この方法では世界の地域ごとに、個別にワクチン開発が必要になる可能性も懸念される。また薬品やワクチンによる対策では牛の健康バランスを損なう懸念があり、牛乳の生産量が減少するなどの問題につながる心配もあるといわれている。

そうしたなか、より効果的活安全な方法で牛のゲップに含まれるメタンを減らすことを目指すワシントン州立大学の研究チームは、カンガルーの前腸部に存在するバクテリアの一種に注目した。過去の研究例から、カンガルーが持つバクテリアには、メタンではなく酢酸を生成するものが含まれることが分かっていた。そして研究を進めるにつれ、このバクテリアはなぜか成長したカンガルーでは発見できず、子どものカンガルーにしか存在しないことがわかったという。

明確にどのバクテリアか、とまでは特定できなかったものの、子カンガルーの腸内にはそれがいることがわかったため、研究チームは子カンガルーの糞のサンプルを使ってバクテリアの混合培養を行うとともに、薬品でメタン生成バクテリアを減らしたうえで、牛の第一胃(牛には胃が4つある)を模した環境に導入した。そして観察を継続したところ、植え付けた培養物に含まれる酢酸生成バクテリアは順調に増殖を続け、数か月でメタン生成バクテリアに取って代わることができたという。

チームの主任研究者であるBirgitte Ahring氏は「この培養物は非常に優れている」と語り、定期的にメタン生成バクテリアの抑制を施しつつ長期間使用できれば、実際に牛のゲップをメタンフリーな状態に近づけられるかもしれないとしている。また研究者らは将来的に、実際の牛で実験したいと考えているとのことだ。

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